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当社(会計事務所)では、業務上のデータをほとんどマイクロソフト社のOffice Groove 2007 というソフトで管理しています。
Office Groove 2007 を一言で言うと「データを暗号化してグループで共有する」ためのソフトです。
簡単に説明します。
まずはGROOVE(ワークスペース)という箱をイメージしてください。この箱の中にデータを放り込むとソフトが勝手にそのデータを暗号化(第三者が見られない状態)してくれます。
そしてまた、その箱をAさんとBさんが2人で共有する約束にすると、Aさんがデータをその箱に入れると、Bさんの箱に自動的にコピーしてくれるという機能もついています。
会計事務所とお客様との間での最も有効な使い方は、「会計データの共有」だと思います。お客様のところで入力した会計データを瞬時に会計事務所で見ることができます(その逆の場合も同様です)。
メリットを簡単に3つにまとめると…
メリット① バックアップデータ(会計ソフト)のメールを使ってのやり取りがなくなりました。加えて、会計データ自体と通信環境の両方が暗号化されるため非常に安全になります。
メリット② 会計データの最新版が、常に会計事務所とお客様の両方にあるので、仮にどちらかのパソコンが壊れても、最新データの復旧が簡単にできるようになります。
メリット③ アラート機能を利用して、決め細やかな仕事の進捗管理ができる
メリット①
会計データのバックアップをとって、メールにデータを添付して会計事務所に送信する。または、会計事務所から返信されたメールに添付されていたバックアップデータを会計データに読み込むという作業は、かなりパソコンに慣れた方でないと難しい作業です。また、暗号化されていないメールのやりとりは、はがきと封書に例えると、はがきに相当するといわれています。技術的なことはあまり詳しくありませんが、メールというのはやる気になると第三者が簡単に読むことができるのだそうです。
Grooveを使っての会計データの管理では、会社の今使っているデータそのものの「共有」が可能です。したがって、バックアップを送信するという面倒な作業がありません。また、年度更新などのお客様にとって頻度の低い作業も、操作に慣れた会計事務所側が行うことによって、お互いの時間を節約することができます。
また、特に意識することなく、会計データも暗号化されますので、万が一パソコンが盗難にあっても、データが見られてしまう可能性はほとんどありえなくなります。会計データを盗まれてはいけないということで、ネットにもつなげない、スタンドアロンのパソコンで不便な運用をされているケースを散見しますが、このような使い方よりもGrooveを使って、便利かつ安全に使う方が、ずっと現実的ではないでしょうか。
メリット②
Grooveでは、自動的にお客様の会計データを会計事務所にコピーすることによってファイルの情報を共有します。少し難しくなりますが、ひとつのファイルをお客様と会計事務所でシェアするのではなく、お客様が見ているデータはお客様のパソコン内にあり、会計事務所が見ているファイルは会計事務所のパソコン内にあって、それをあたかも同じものを見ているかのように、自動的に処理をしてくれます。
つまり、自動的にバックアップを取っているのと同じことになります。したがって、お客様のパソコンが故障したり、盗難にあったりしても、その直前のデータが会計事務所にあります。また、会計事務所側で何台かのパソコンでGrooveを使っていれば、その数だけお客様のデータのバックアップがあるということになります。これらのパソコンが同時に故障する確率は・・・ 天文学的に低いことは簡単に想像できるはずです。
メリット③
Grooveでは、ファイルに更新があると、こちらのイメージのように「お知らせ」が表示されます。したがって、会計事務所からみると、お客様が会計データ入力をされた場合に、わざわざ連絡を頂かなくても分かります。
また、自社の社員が、「今日、どのお客様のどのような処理をしたか」も、新規作成・更新のあった、会計データや、ワード、エクセルのファイルが一目で分かるので、「見ていない様で、きちんと見守っている」社長または上司としての仕事をスマートにこなすことができるようになります。
まとめ
セキュリティーソフトを導入したり、パソコンにパスワードを設定したりして、第三者がログインできないようにするなど、セキュリティーレベルを上げる方法はいくつもあります。しかし、セキュリティーは利便性とトレードオフの関係にありますので、どの業務にはどのレベルのセキュリティーを確保するべきかという課題がついて回ってきました。
セキュリティーだけを優先的に考えた場合、パソコン内の情報を全て暗号化して、パスワードを入力しないと絶対に開けないようにするのが理想です。しかし、暗号化されたデータは検索や共有の面で支障が出ます。このメリット・デメリットがバランスよくコントロールできるのが、Office Groove2007 です。
会計事務所としての使い方やメリットを紹介ししてきましたが、これらのメリットは会計事務所以外のどんな業種にも応用可能だと思います。
http://office.microsoft.com/ja-jp/groove/default.aspx
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筆者プロフィール
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松波 竜太(まつなみ りょうた)
税理士(関東信越税理士会所属)
神奈川大学経済学部卒。大手OA機器商社・会計事務所勤務を経て、現在 浦和税理士法人 代表社員(埼玉県さいたま市)。本業の決算、税務申告・相談を行う傍ら、会計データの統計解析法を研究する。帰納的アプローチにより企業の経営課題を分析し、成果をクライアントである中小企業にフィードバックしている。「多くの中小企業がデータもツールもそろっているのに、それを分析して経営に生かす方法を知らないのは残念。中小企業はもっと生産効率を高めていける」と考えている。「お役立ち会計事務所全国100選 2004年度版」(三和書籍、実務経営サービス編)に選出される。
ブログ:http://www.maznami.biz/
この文書は「電子署名・認証利用パートナーシップ 2004年度活動報告書」の「電子署名・認証利活用分野に関する提言」の一部として松本泰氏(セコム)と齋藤敏明、阿部隆幸が執筆を担当したものです。報告書全文は下記にあります。
http://www.japanpkiforum.jp/shiryou/report/fy2004_jesap_report.pdf
e文書法と税務関係書類の電子保存
e-文書イニシアチブとe文書法
e-JapanⅡでは、e-文書イニシアチブとして、「法令により民間に保存が義務付けられている財務関係書類、税務関係書類等の文書・帳票のうち、電子的な保存が認められていないものについて、近年の情報技術の進展等を踏まえ、文書・帳票の内容、性格に応じた真実性・可視性等を確保しつつ、原則としてこれらの文書・帳票の電子保存が可能となるようにすることを、統一的な法律(通称「e-文書法」)の制定等により行うこととする。」という方針を決定し、これにより成立した法律が「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」(通称:e文書法)です。
この法律は、既存の法律で規定されている書面保存義務を事業者の選択により、電磁的記録として保存することを認め、そのための共通事項を定めました。その目的は「電磁的方法による情報処理の促進を図るとともに、書面の保存等に係る負担の軽減等を通じて国民の利便性の向上を図り、もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与すること(同法1条)です。
民間の事業活動の中では、様々な書面が作成され、交付され、また保存されています。これらの書面は、法令の規定により作成されるものもあり、法令上、保存義務が課せられるものも相当数あります。この法律の施行により、これらの民間業者に義務付けられた「書面」に関する義務を、選択により電子的に行うことが可能となります。
e-文書イニシアチブの背景には、既存の法制度が「書面」を前提としており、これらの規定が、民間の経営活動や業務運営の効率化の阻害要因となっているという認識がありました。この法律によって、これからは「生成」「交付」「保存」という一連の業務を、原則として電子的な記録「電子文書」で行うことが可能となります。このための立法措置がe文書法ということになります。
しかし、緊急時に即時に確認の必要があるもの等は、一部例外とされました。具体的な電子化の範囲は主務省令で定められることになります。また、税務関係については「適正公平な課税確保のため」として、次項で述べる措置が採られました。
e文書法の税務分野での立法措置
他の分野と異なり、税法の規定する保存義務はすべての企業に関係があり、また、その保存義務も多岐にわたります。後述のように、企業は、税法(特に法人税法)の規定により、企業活動で生成され、また受領する債権債務、金銭に関する書面を保存しています。これらの「書面」は企業が保存する書面の中の相当部分を占めるものと考えられます。また、税法以外の法令で作成や保存の義務があり、法人税法上も保存義務があるという「書面」もあります。したがって税務分野の電子保存は「e-文書イニシアチブ」に大きな影響があるといえます。
立法形式の選択
税務分野で電子保存を容認するとすれば、次のような立法形式が考えられます。
1. 基本法で原則すべてを容認→具体的な範囲は政令委任
2. 個別税法の改正→法人税法、消費税法などの保存規定を個別に改正
3. 電子帳簿保存法の改正→電子帳簿保存法を改正、追加
1は、基本法方式とも呼ばれ、すでに施行されている電子申請、電子申告の根拠法である「行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律」が、この方式です。
2は、一括法方式と呼ばれ民間取引で書面交付を義務付けている法律を一括して改正した「IT書面一括法」などがこの方式です。
今回のe文書法では、1の基本法方式が採られましたが、税務分野については、「整備法」という形式で、既存の電子帳簿保存法が下記のように改正され第4条に第3項が追加されました。
電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律
(国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等)
第四条 保存義務者は、国税関係帳簿の全部又は一部について、自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する場合であって、納税地等の所轄税務署長(財務省令で定める場合にあっては、納税地等の所轄税関長。以下「所轄務署長等」という。)の承認を受けたときは、財務省令で定めるところにより、当該承認を受けた国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存をもって当該承認を受けた国税関係帳簿の備付け及び保存に代えることができる。
2 保存義務者は、国税関係書類の全部又は一部について、自己が一貫して電子計算機を使用して作成する場合であって、所轄税務署長等の承認を受けたときは、財務省令で定めるところにより、当該承認を受けた国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該承認を受けた国税関係書類の保存に代えることができる。
3 前項に規定するもののほか、保存義務者は、国税関係書類(財務省令で定めるものを除く。)の全部又は一部について当該国税関係書類に記載されている事項を財務省令で定める装置により電磁的記録に記録する場合であって、所轄税務署長等の承認を受けたときは、財務省令で定めるところにより、当該承認を受けた国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該承認を受けた国税関係書類の保存に代えることができる。
(アンダーラインが平成17年4月1日施行の改正部分)
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電子帳簿保存法改正のポイント
上記のように電子帳簿保存法は、税務署長の承認を受けることにより、4条第1項で自己が最初の記録段階から電子計算機を使用して作成する帳簿、第2項で同じく自己が最初の記録段階から電子計算機を使用して作成する書類の電子保存を認めていました。今回の改正により、これら以外のものについても「財務省令で定める装置により電磁的記録に記録し保存する」ことが、認められることとなりました。税務署長の承認が必要であることは、1項、2項の場合と同様です。ここでいう「財務省令で定める装置」とはスキャナのことです。これを整理すると下記のようになります。
電子帳簿保存法4条で電子保存が認められるもの
|
種類等 |
法令 |
主なもの |
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自己が一貫して電子的に作成する帳簿 |
電子帳簿保存法4条1項 |
総勘定元帳、仕訳帳等 |
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自己が一貫して電子的に作成する書類 |
電子帳簿保存法4条2項 |
請求書、納品書控え、レジデータ等 |
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その他 |
電子帳簿保存法4条3項 |
取引に関係して受領し、または発行した証票類等 |
今回の改正は電子帳簿保存法4条3項の追加であり、具体的には、1項2項で定めるのもの他、財務省令で定めるものにつて、スキャナ保存を容認するという規定になっています。したがって今回の改正のポイントは、スキャナ保存の容認ということになります。
その具体的な範囲、要件等は財務省令で定められることになっており、「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則」が改正されました。
スキャナ保存の対象範囲
税法には、様々な帳簿や書類の保存義務規定があります。すべての企業に関係するものが次の4つです。
1. 法人税法の保存規定
2. 消費税法の保存規定
3. 所得税法(源泉徴収関係)の保管規定
4. 電子帳簿保存法10条による電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存義務
今回の改正で、追加されたスキャナ保存の範囲を理解するためには、これらの個別税法の規定の理解が必要となります。また個別企業の業態によって保存義務のある書類は全部異なります。本稿では、法人税法の保存義務規定を主に解説します。
法人税法施行規則では保存義務のあるものを次のように分類しています。
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種別 |
具体例 |
|
1.帳簿 |
総勘定元帳、仕訳帳、その他資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引に関して作成されたその他の帳簿 |
|
2.決算関係書類 |
棚卸表、貸借対照表及び損益計算書並びに決算に関して作成されたその他の書類 |
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3.その他の証票類 |
取引に関して、相手方から受け取った注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類及び自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものはその写し |
上記の1、帳簿は電子帳簿保存法4条1項の対象となります。2は、スキャナ保存の対象外とされました。また3のうち、記載金額が3万円以上の契約書と領収書も対象外とされました。したがって整理するとスキャナ保存の対象となるものは、①上記の3のうち契約書、領収書以外のもの、②記載金額が3万円未満の契約書、領収書ということになります。
電子帳簿保存法の適用範囲(4条3項が新規に認められたもの)
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種別 |
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電子保存の種別 |
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1.帳簿 |
4条1項対象 | |
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2.決算関係書類 |
書面保存 | |
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3.その他の証票類 |
相手また自己が作成する領収書等(3万円未満) |
4条3項対象 |
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相手また自己が作成する領収書等(3万円以上) |
書面保存 | |
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相手また自己が作成する領収書等以外の証票 |
4条3項対象 | |
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自己が一貫して電子的に作成するもの |
4条2項対象 | |
スキャナ保存の要件
スキャナ保存を選択するためには、税務署長への承認申請が必要ですが、本稿執筆段階では、承認申請書の記載事項等の詳細が不明であり、以下は1月31日の財務省令によっています。スキャナ保存の要件の概要は次のとおりです。
スキャナに関する事項
原稿台と一体となったものに限る(ハンディスキャナ等は不可)
解像度1ミリメートル当たり8ドット以上(概ね200dpi相当)
256階調以上のカラースキャナ
入力タイミング
その書類の受領、作成後速やかに行うこと(電子帳簿保存法4条1項の承認を受けている場合は事務処理規定を整備することにより例外規定がある)。
電子署名に関する規定
一つの入力単位ごとに、入力を行う者または直接監督する者の電子署名を付すこと(電子署名法の認定認証事業者及び商業登記法によるものに限る)。
タイムスタンプに関する規定
財団法人日本データ通信協会が認定する「時刻認証業務」がタイムスタンプを付すこと。
スキャン記録の保存
スキャナで読み取った際の解像度、階調及び書類の大きさに関する情報の保存。
完全性の要件
訂正や削除を行った場合は、これらの事実内容を確認できること。
帳簿との関連性
スキャナ文書と帳簿との間の関連性を確認できるようにしておくこと。
見読性に関する要件
電子計算機、プログラム、カラーディスプレー、カラープリンタ、操作説明書の備付。
次の条件で出力できるようにしておくこと。
① 整然とした形式であること
② オリジナル書類と同程度に明瞭であること
③ 拡大、縮小して出力することが可能であること
④ 4ポイントの大きさの文字が認識できること
検索性の確保
取引年月日、取引金額等一定の検索条件にしたがって検索ができる機能を確保すること。
タイムスタンプを要しないもの
なお、国税庁告示第四号(平成17年1月31日)に定める書類については、スキャン文書にタイムスタンプが要件とされません。定型的な約款があらかじめ定められている場合の契約の申込書や、口座振替の申込書などが該当します。
スキャナ保存制度の創設の意義
執筆段階では、詳細が不明ですが、スキャナの入力単位や検索性の確保がどのように取り扱われるか等によりコストは大幅に違ってきます。検索性の確保では、スキャンデータ中にある「日付」や「金額」等を検索することができるようにするためには、OCR処理が必要となりますが、この完全性は期待できません。検索性要件が厳格であれば、オリジナルデータの記載内容をデータに付加する必要がでてきます。またスキャナで読み取った際の情報の保存でも「書類の大きさ」に関する保存が規定されています。
しかし、電子帳簿保存法4条3項によるスキャナ保存制度は、企業が保存する電子文書、画像データの完全性を確保する手段として、電子署名、タイムスタンプに「市民権」を与えたという意味で画期的な意義があります。また、要件を満たすスキャナもさして高価なものでなく、中小企業にとっても十分導入可能なものであるといえます。
e文書法は、単に企業負担軽減という目的だけでなく「電磁的方法による情報処理の促進を図る」ことを目的」(同法1条)としています。中小企業も含め多くの企業が導入することによってe-文書イニシアチブの目的が達せられることになります。
e文書法については衆議院内閣委員会で「税務関係については適宜その対象範囲の見直しを行うこと」との付帯決議が付されています。(平成16年11月10日)なお参議院でも同趣旨の付帯決議が付されています。
衆議院内閣委員会付帯決議
政府は、両法律の施行に当たっては、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。
一 両法律の施行に伴う主務省令等の制定及びその運用に当たっては、国会における議論及び民間事業者等の意見を十分に踏まえるとともに、経済社会情勢等の推移に応じて必要な見直しを行うこと。また、主務省令等の内容について、国民の経済活動等に支障のないよう、十分周知徹底すること。
二 情報の改ざん、漏えい、不正使用等が行われないよう、民間事業者等に対して、情報通信の技術革新に対応したセキュリティ対策及び個人情報の保護のための適切な措置が講じられるよう必要な助言等を行うこと。
三 税務関係書類の電子的な保存については、適正公平な課税及び電子化によるコスト削減等の観点を踏まえつつ、適宜その対象範囲の見直しを行うこと。
四 処方せんの電子的な作成・交付等については、患者等の利便性の向上、技術的実現可能性等を踏まえつつ、その可否について引き続き検討していくこと。
五 地方公共団体において両法律の趣旨にのっとり適切な措置が講じられるよう、情報提供その他必要な措置を講ずるものとすること。
一般に企業にとって、税法が規定する保存義務が最も範囲が広いと考えられます。しかし、適正公平な課税が確保できる制度でなければならないことは言うまでもありません。最後に、今後電子保存を拡大していく上で、考慮すべき事項を挙げておきます。
電子保存の対象に関して
通達等が規定する保存義務
e文書法では、「法令の規定により書面により行わなければならないとされているものについて、書面の保存に代えて当該書面に係る電磁的記録の保存を行うこと」を容認する法律であり、この場合の「法令」とは、法律、政省令のことをいいます。通達や大臣告示等で保管を義務付けているものは含まれません(参議院内閣委員会答弁)。税務関係書類では、給与支払者が保管する「扶養控除等申告書」や「保険料控除申告書」等は、これに該当します。これらについての取扱を明確にする必要があります。
3万円以上の領収書等
電子化文書(スキャン文書)の真実性を担保するためには、次の3つのすべてが保証されなければなりません。
①オリジナルの文書に偽造や改ざんがないこと
②スキャンが正しく行われたこと
③画像処理後改ざんがないこと
今回のスキャナ保存制度の創設では記載金額が3万円以上の、契約書、領収書等は除外されました。しかし、スキャナ保存を行う場合、3万円未満はスキャナ保存、それ以外は書面とすると、領収書綴りや請求書発行控え等の一覧性が損なわれます。むしろすべてスキャナ保存とし、別途書面も保存するほうが利便性が高いと考えられます。さらに、現行のマイクロフィルム保存制度と同等に一定年限を経過したものについては、3万円以上のもの電子保存のみでよいとする制度を導入することが可能であれば、大きな負担軽減となると考えられます。
おわりに
e文書法案は、文書の電子保存を容認する法律であり、電子保存を義務付ける法律ではありません。従って、紙による保存から電子保存に移行するかどうかという判断は各企業に委ねられています。
現在の社会は、法制度で保存が義務付けられた文書等に関しては、まだ、紙文書が中心であり、民間の取引においても紙と押印が主流だと考えられます。それに対して、ITによる効率化をはかるためには文書の電子化は避けて通れない課題であり、e文書法の大きな意図はここにあるはずです。一方、理想的な電子社会は、効率と共に不正に強く透明性の高い社会であるべきはずです。これには、やはり電子署名やタイムスタンプといった技術の普及と更なる研究開発が欠かせないと考えられます。
文書の電子保存に関しては、電子署名、タイムスタンプの実用化以前と、現在では全く状況が異なります。電子帳簿保存法の「自己が一貫して電子計算機を使用して作成する帳簿書類」に限り、電子保存が認められるというのは、電子署名法が施行され、電子署名、タイムスタンプが実用化された現在では、見直しが必要な段階にきていると考えます。
電子署名とタイムスタンプが施された電子文書は、その電子文書のデータ自体が、誰の意志のよって存在し、改ざん検出が可能で、何時の時点から存在しているかを証明します。こうしたことにより、電子文書は、「電子システム保存」の対象となった装置内に留まらず連携するために必要な電子文書として機能するはずです。e-JAPAN戦略の中でもIT基盤を利用した連携の必要性が至るところで説かれていますが、官民や利害関係者間などの連携を促進するためには、この電子署名とタイムスタンプが施された電子文書の重要性がもっと認識されるべきだと考えられます。 e文書法では、その目的として「国民の利便性の向上を図り、もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与する」としています。こうしたことを現実のものとするためには、多方面にわたる議論と、努力が望まれます。
参考文献
松本 泰「文書法案のインパクトと今後の電子社会のあり方」
http://www.jnsa.org/active/press/vol12pdf/2_tokusyu1.pdf
この文書は「これからは収支会計の時代」として税理士新聞2007年9月15日号から三回に分けて連載されたものです。
これからは収支会計の時代①
会計人、会計制度の常識は中小企業にとって非常識!?
ビズソフト株式会社 中尾安芸雄
「常識を疑う正しい力を身につけよう」。東京大学小宮山総長の本年の入学式でのメインメッセージである。日ごろ、当然に思って気にかけないことの中にこそ、社会を変える重要なヒントがあるものだ。会計事務所の常識、とりわけ「会計」に対する認識も、顧問先にとって非常識かもしれない。果たして、顧問先が考える会計とは、どのようなものなのか。
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「会計」は「経理」の中の6分の1
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会計事務所が行っている業務こそ、中小企業の会計業務の中心である。会計事務所の視点では、それは当然のことと思える。会計事務所の世界では、「会計」と「経理」という言葉は大きな隔たりなく認識されている。つまり 会計・経理とは、取引をすべて仕訳にして、元帳へ転記し、試算表、財務諸表を作成することである。この業務が会計・経理の中心であると当然のように考えている面があるのではないか。しかし、あらためて顧問先の立場から考えると、上記の業務は、会計事務所に言われるがままに行っている記帳業務(あるいは、委託している記帳委託業務)であって、実際にはそれ以外に、もっと切実で根本的な経理という業務があることに気づく。
商売を行う上で誰もが必ず行う経理業務というものがある。請求書を発行し、売上帳や売掛帳に記帳し、入金確認を行うなどの請求・回収管理(1)(図参照)。支払請求書を整理し、仕入帳や買掛帳に記帳し、月末の振込み処理など行う支払管理(2)。現金の出納・金庫管理・銀行通帳の記帳・経費精算などの出納管理(3)。勤怠管理や給与明細書の作成、源泉税納付、社会保険処理等などの給与事務(4)。来月以降の資金繰りを試算し、事業計画を作成し融資交渉などを行う資金繰り(5)。そして、仕訳を起票し、元帳、試算表から、財務諸表を作成、納税申告する会計業務(6)。おおまかに分類するとこのような6つの経理の基本業務がある。
顧問先は、会計・経理といえば、明確ではないにせよ、このような6つの業務を思い浮かべる。(6)の会計業務は、顧問先にとっては、実はもっとも緊急性の低い業務に見える。(1)から(5)は、強制されなくても、また、教えられなくても必ず我流ででも行う必要がある業務である。他方、会計業務は、税務署を経由して納税手続きをしなければならないという意識が働いてはじめて実践する傾向が強い。つまり、会計事務所の考える「会計」は、顧問先にとっては、6分の1あるいはそれ以下の重要性しか感じていない場合が多い。
所有と経営が分離していない中小零細企業が圧倒的に多いこの国では、経営者から株主への説明責任は希薄であり、したがって本来の会計の存在する土壌がない。納税義務によって顕在化する納税会計こそが、現在の会計の中心である。
会計事務所が考えている「会計」は、顧問先にとっては「経理のほんの一部」でしかない。このような視点は、これから会計事務所のビジネスを考える上で非常に重要ではないか。
たとえば、経理の6つの基本業務の中で、(5)の資金繰りに関して、会計事務所は従来積極的に関わらなかった。理由はいくつか考えられる。ただ、一番大きな理由は、会計が経理のほんの一部でしかないという視点が欠如していたことが大きいのではないか。必ずしも計算が得意ではない顧問先が我流ででも行う資金計画の領域に会計事務所が関与しない手はないと考えてみる、そういう視点である。顧問先が喜ぶことには積極的に進出しなければならないし、いずれ誰もが行うようになる。
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「利益」の意味が分からない!
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顧問先にとって緊急性の低い会計は、さらにやっかいなことに常識で理解できる内容ではない。経理の6つの業務のうち会計以外は多少勉強が必要な面はあるにせよ常識の範囲で理解できるが、会計は専門性が高く一般的には理解できない。会計が納税会計である現状はさらにその専門性を高めている。
会計事務所 「今期はかなり利益が出ますね・・」
顧問先 「それでは、さっそく銀行借入を返済しましょう!」
こんな会話が実は未だに現実に存在する。会計事務所が日々当たり前のように計算している利益金額と所得金額の計算過程を、顧問先はどれくらい理解しているだろうか。9割以上の顧問先が、間違いなく理解していないはずである。曖昧な数字、理解しない数字は経営には役に立たない。しかし、会計事務所は何十年も前から、利益を中心に説明する。つまり、財務諸表が理解できないのに、財務諸表で説明する。
経理の6分の1の会計業務、しかも専門知識が詰まった世界のことなどわかるはずもない。会社経営全体から見れば経理業務自体が10分の1くらいのウエイトしかないのが実情である。会計学の勉強をする時間などない。今期の利益は○○万円ですと言われても実感がない。銀行に返済すればお金が減るのだから、税金が安くなると考えるのは、決して笑えないことである。この経営者は即座に我流節税案を考えただけでも優秀だと思う。自分は英語が得意だからと言って、英語が話せない相手に英語で説明するのは少し不親切である。会計事務所と顧問先の関係も似てはいないか。(つづく)
れからは収支会計の時代②
損益より収支、過去より未来
なぜ、資金繰りを守備範囲にしないのか?
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シャウプ税制施行から約60年
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会計事務所にとって「会計・経理」は、会社法や税法でも計算体系のベースになっている「適正な期間損益計算」を行うことが第一義である。他方、会計のプロではない顧問先にとっては、会計事務所の守備範囲である「会計」は、日常のさまざまな「経理」業務の6分の1くらいの重みしか持っていないことを前回説明した。このことは、税理士あるいは税理士制度というものをどのように捉えるかによって、まったく異なる議論となる。税理士を、申告納税制度の理念にそって納税義務の適正な実現を図ることだけを使命と考えれば、「会計」が「経理」の6分の1であることにあまり問題はない。しかし、税理士を、数字や法律に強いという特性を活かした中小企業の経営支援サービス業と考えれば、6分の1は問題と思われる。顧問先の立場になって考えれば、会計という難解な数字ではなく、経営者が肌で感じることができる資金繰りのアドバイスを聞きたいと思うはずである。資金ショートを起こさないことが事業を継続することであると経営者はわかっているが、その数字は会計事務所ではなく経営者自身あるいは会社側で管理している。第二次世界大戦後、いわゆるシャウプ税制が施行されて60年近くも経過するのに、未だに多くの会計事務所は、顧問先の資金繰りを計算することができないでいる。これは非常に不思議なことである。ニーズがあるのにそれを解決するサービスが育たない。「会計」よりも経営上重要度が高い「資金繰り」を会計事務所が守備範囲とすれば、顧問先にとって会計事務所の存在価値は一層高まるに違いない。しかし、未だにサービスが普及しないということは、おそらくそこには理由が存在するはずである。それはいったい何なのだろうか?
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資金繰りを守備範囲にできない理由
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理由の一つとしては、会計事務所が会計だけ、つまり税務会計の領域だけで収益を上げることができたことが大きかった。(税務)会計だけで年間50万円から100万円の顧問料を獲得できた時代が長く続いた中では、敢えてサービス向上に踏み切る動機付けが薄かった。ただし1社あたりの平均顧問料は長年上昇することはなく、近年は、下降傾向にあると言われている。今や(税務)会計だけで顧問料を維持することは困難になって来ている。もう一つの理由は、資金繰りのツールがなかったことである。会計業務は、専用機・PC用パッケージソフトが開発され、会計事務所の業務を効率化してきたが、それでも会計事務所の業務は、未だ顧問先自計化率は平均40%程度で停滞しており、税務会計以外の分野に進むことができなでいるのが現状である。この中で、さらに(税務)会計とは別個の計算体系である資金繰り計算をカバーすることは現実的には無理がある。他に理由もあるが、おそらくこの2つが、戦後60年間も大きな変化が生じなかった主要因であると考える。従来のサービス内容では顧問料は高いと感じる顧問先が増加している今こそ、会計事務所は資金繰りも含めた経営数字のアドバイザとしてそのサービスの変化を顧問先に提示する必要があるのではないか。
では、なぜ資金繰りのツールがなかったのか。勿論、資金繰り・資金計画のソフトは表計算ソフトのテンプレートまで含めると数多く存在する。ただし、従来のソフトは根本的に2つの問題点を解決していない。まず第一に、損益会計を理解していることを前提に資金繰りソフトが開発されていることである。顧問先の立場で考えればわかることだが、損益会計は十分には理解できていないのであるから、損益会計の計算体系をベースにそれを資金繰りつまり資金収支計算に変換しても、顧問先には理解できない、つまり経営に役立てることはできないのである。顧問先が理解可能とするためには、損益会計から一切離れ収支計算をベースに、つまり家計簿と同じレベルで理解できるようにしなければならない。第二は、リアルタイムに情報を収集する仕組みがないことである。損益会計のように過去の事象を扱うのと違って、資金繰りは、未確定要素を含めて計算しなければならない。大企業の予算管理とは異なり、中小零細企業では、経営者の勘も含め日々流動的に動く情報を常時反映させなければ経営に有用な資金繰り数字とはならない。現場の経理業務と社長の予測を織り交ぜて計算できるソフトの仕組みが必要である。
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ITの進化で強力ツールが誕生
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しかし、現実には資金繰りを計算することはさらに容易なことではない。会計事務所が顧問先の資金繰り予測の計算を依頼されたとする。会計事務所が所持する情報は、先月締め日までの売上と仕入の請求情報と、先月末時点での現預金等の残高までである。得意先ごとの請求、仕入先ごとの請求に対して、その回収予定日、支払予定日の情報が無い。また、今月見込みの売上仕入請求額を社長・営業などから聞き取らなければならない。このように、過去の確定計算である損益会計と比較しても、よりタイムリーな情報を日々集積しなければならないのである。FAX・メールなどを使って表計算ソフトで対応できるものかどうかは容易に判断できる。数社なら可能かもしれないが、顧問先への標準的なサービスにするには無理がある。しかし、ITの進化は、このような難題も解決するツールを提供しはじめた。会計事務所が顧問先の経営数字全般の相談に対応することは、もう現実的に可能な時代になったのである。(つづく)
こらからは収支会計の時代③
損益会計の一辺倒から脱却すべき
会計事務所が顧問先の資金調達をサポートできない理由として、前回は「会計」に対する捉え方の違いを説明した。今回は、会計事務所が資金繰り計算まで業務を拡大できない技術的な原因と、その解決策を解説する。
資金繰りが計算できない4つのウィークポイント
会計事務所が顧問先の資金繰り計算まで業務範囲を拡大することが難しい技術的な原因は、主に以下の4つである。(1)取引ごとの回収予定・支払予定などの決済情報を網羅的に入手できない、(2)計算時点での売上・仕入等に関する予測数値を網羅的に入手できない、(3)入手した情報から効率的に資金予測を計算するツールがない、(4)顧問先から情報をリアルタイムで入手するツールがない。これらの原因が解決されれば、会計事務所は顧問先の資金計画や短期資金繰りも把握することが可能となり、期間損益計算以外にもうひとつ重要な計算体系である収支計算を業務に取り込むことができる。
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事務所業務を拡大させる新しいシステムに注目
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では、この4つの原因を解決するには、どうすればよいのだろうか。まず、(1)に関して、相手先ごと、取引ごとの回収と支払に関する決済情報を漏れなく入手するには、日々の経理業務と連動して情報を収集する仕組みが是非とも必要である。顧問先に対して、資金繰り計算のために別途事務作業を負担させることは現実的ではなく、また、顧問先に常駐しているわけではない会計事務所員がその作業を担当することも無理である。つまり、営業事務や支払管理などの経理業務を行うことと一体化しているシステムが必要である。
次に(2)に関して、予測数値は、予算制度が運用されている中堅・大企業と違い、中小企業では社長の頭の中に入っている場合が多い。資金繰りを考える場合にも、社長が会計とは別系統で独自の計算(暗算?)を行っている。この予測数値を常時継続して書き込む(書き込みたくなる)ことが必要になる。書き込む動機付けは、社長が理解できる形式であることと、正確かつ簡単に計算されることである。このようなシステムがやはり必要となる。
さらに(3)に関しては、経理業務と一体化したリアルタイムな決済情報と、社長の勘も含めたリアルタイム予測数値とを連結させるシステムが必要となる。会計では、請求書を発行すれば売上が計上されるが、資金繰りでは、その回収予定値が計算対象となる。しかも、これから発行する請求書の回収予測値までも計算対象としなければならない。予定だけではなく、予測・予想までもが一体的に計算されるシステムが必要である。
以上の3つの原因解決方法を、すべて同時に解決したソフトウェアはすでに実現している。経理業務の中の会計処理を行うソフトウェアは「会計ソフト」と呼ばれる。他方、損益計算ではなく資金繰り計算を制度会計・複式簿記から離れて行うソフトウェアを「収支ソフト」と呼称することとする。収支ソフトは、未来の決済情報を主に扱うため、この3つの課題を同時に解決していなければならない。
さて、最後の(4)の課題は、従来は解決不可能な課題であった。ITの進歩が特に必要な課題であったが、最近、Microsoftが発売した「Groove(グルーブ)」というソフトウェアは、顧問先からリアルタイムに情報を入手する一つの解決方法を実現する画期的なソフトウェアである。会計ソフトや収支ソフトのデータ、その他ファイルサイズにほとんど制限なく、簡単・安全・迅速に情報を共有できるソフトウェアである。収支ソフトとGrooveを組み合わせることにより、会計事務所は顧問先の資金繰り計算を完全に業務に取り込むことができるのである。
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損益会計と収支会計は車輪の両輪に値する
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中小企業にとって損益会計よりも資金繰り計算を行う収支会計の重要性がより高いと述べたが、これは勿論、利益計算、損益会計を軽視しているわけではまったくない。経営状況を把握するためには会計の仕組みは必要であり、また、納税額の計算のためにも必要である。ただ、会計事務所はいままで、損益会計一辺倒であり収支会計を軽視してきた。顧問先の経営にとって重要な収支計算を会計事務所が把握でき、相談業務としてアドバイスが可能となることは、多くの顧問先にとってメリットが大きい。
会計事務所業界と会計ソフトウェアメーカーは、自計化という視点で、長年にわたり、顧問先に会計ソフトによる会計を押しつけていた面はなかったか?自計化であろうが記帳代行であろうが、顧問先のレベルとニーズに合わせて、税務と経営支援を行えることが大切である。
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収支会計という分野にはブラックボックスがない
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収支会計は、社長の売上予測数値を扱うため、社長とのコミュニケーションが必然的に発生する。過去会計、つまり前月の試算表を前にした話しから、経営の最前線にジャンプすることになる。この数字に興味を持たない社長はまずいない。会計事務所が税務という専門分野を離れて社長と経営数値の話しをする厳しい場所かも知れない。収支会計には専門知識はいらないので、ブラックボックスはない。当然、現実的・具体的な商売の話しであり、経営の相談相手として真に活躍できるフィールドではないか。税務等の専門分野の知識と、多数の顧問先事例を体験できる職業上のポジションを活かして顧問先の経営支援をするために、会計事務所が収支会計という武器を持つことを期待する。(おわり)
この文書はJESAP(電子署名・認証利用パートナーシップ)が主催した「電子署名・認証フォーラム」(平成15年9月25日、工学院大学)の電子申請とビジネス支援セッションで発表した原稿です。
下記の活動報告を参照してください。
ECOM(電子取引推進協議会)平成15年度事業報告書
http://www.ecom.jp/about/jigyou/houkoku_2003.pdf
財団法人 日本情報処理開発協会 事業報告書
http://www.jipdec.or.jp/ov/disc/h15/hokoku.pdf
「国税電子申告・納税システム(e-Tax)と
税理士事務所認証局 その技術的・法的考察」
阿部 隆幸(関東信越税理士会)
齋藤 聰明(東京税理士会 理事)
(2003年9月)
1 はじめに
平成15年7月14日「国税関係法令に係る行政手続等における情報通信の技術の利用に関する省令」(以下 財務省令)が公布された。平成14年12月13日に成立した「行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律」(以下、「情報通信技術利用法」と略)に続く、国税電子申告・納税システム(以下e-TAX)・税務手続の電子化のための法的根拠の最終段階である。
e-TAXのために個々の税法の改正は行われておらず、「情報通信技術利用法」によってe-TAXが実施される。個々の税務手続の電子化については、同法第3条により財務省令に委任された。それが、この財務省令ということになる。この省令によって95の国税関係手続が電子化されることになった。
現状電子政府にあって、要求される署名環境はあくまで否認防止のみを目的としたものである。つまり、公開鍵の用途はX509v3証明書フィールドである鍵種別(KeyUsage)に記述されるのは、以下のみということとなる。
鍵使用目的拡張の項目 設定Onが必須なもの
電子署名の検証 digitalSignature
否認防止のための電子署名の検証 nonRepudiation
日本税理士会連合会認証局から、e-TAXのために用意される税理士ICカードに格納されている署名環境もまた否認防止のみを目的とするものである。
またe-TAXの仕組みとして、税理士と国税庁受付システム・納税者と国税庁受付システムの間はSSLという仕組みで安全に申告データの交信されるように構築されている。しかし、税理士と納税者の間ではe-TAXの仕組みとして現状なんらセキュリティの確保がなされていない。従前の代理を介した手続き上の利便・安心を基礎に、利用者・国民が本当に安心してIT・電子政府の利便性を享受するために、専門士業のなすべきことは単に監督官庁の電子申請仕様を会員向けに解説することではなく、真に国民をも含めた利用者の立場に立脚した利便性・安全性の検討ではなかろうか。
仮説として、税理士が日本税理士会連合会認証局より使用目的が電子申告などに限定した電子署名環境以外に、下位1位までのユーザーへの電子証明書が発行可能な電子署名環境を提供がされたとして、それを信頼の根拠として税理士事務所が「税理士事務所認証局」を構築する。その状態で、認証局構築・電子証明書の発行・実際の使用・電子署名の検証可能性などを、技術的・法務的見地から検討を行いたい。
e-TAX及び他の電子申請がトリガーとなり、国民が初めて遭遇する電子署名・オンライン手続で「ああ便利なものだな」と感じ、その他の行政手続・民間の文書・社内へも電子化を波及せしめるためにも、民間にあって代理を業とする専門士業は「PKI普及伝道師」としての知識とスキルを身に着けることが喫緊の課題である。
繰り返すが、単に行政手続の電子化に関する行政情報の解説に終始することなく、真に国民・利用者のための電子政府実現に向けて提言・行動しなければならない。
2 e-TAXの根拠法令概観
電子政府構想の中では、例外なくすべての行政手続が電子化される。e-TAXは、その一部にすぎない。行政手続の電子化(オンライン化)のために、平成14年12月オンライン三法と呼ばれる次の法律が成立し公布された。
①行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律(情報通信技術利用法と略、オンライン基本法とも呼ぶ)
②行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(整備法と略)
③電子署名に係る地方公共団体の認証業務に関する法律(公的個人認証法と略)
e-TAXを実施するためには、本来個別の法改正が必要と思われるが、個々の税法の改正は行わずいわば基本法として①のオンライン基本法が制定された。
2-1情報通信技術利用法(オンライン基本法)
この法律は、行政手続電子化の基本法としての性格をもち、その概要を一言で言えば「紙から電子へ」と「ハンコから電子署名へ」というキーワードに要約される。
2-1-1 紙から電子へ
同法第3条1項は「行政機関等は、申請等のうち当該申請等に関する他の法令の規定により書面等により行うこととしているものについては、当該法令の規定にかかわらず、主務省令で定めるところにより、電子情報処理組織(行政機関等の使用に係る電子計算機(入出力装置を含む。以下同じ。)と申請等をする者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。)を使用して行わせることができる。」と規定している。
この規定により、個々の税法で、書面により提出することされていた(当然のこととしてそれ以外のものは前提していなかった)申告書や届出書が、インターネット等の通信回線で送信されることが可能となった。しかし、通信回線で紙を送付することは不可能、従ってパソコンで作成された申告書や届出書の内容(情報)のみが送信されることになる。この情報は、一定の約束事に従った電子符号(デジタルデータ)ということになる。
2-1-2 ハンコから電子署名へ
同法第3条4項は「行政機関等は、当該申請等に関する他の法令の規定により署名等をすることとしているものについては、当該法令の規定にかかわらず、氏名又は名称を明らかにする措置であって主務省令で定めるものをもって当該署名等に代えさせることができる。 」と規定している。
e-TAXではパソコンで作成した電子符号(デジタルデータ)そのものをインターネットで送信するのであるから、従前の署名も押印もできない。そこで申告書などの作成者について何らかの「氏名又は名称を明らかにする措置」が必要となる。
2-1-3 従前の署名・押印にいかなる意味があったのだろうか
普段何気なく行っている署名や押印であるが、どのような意味を持っていたのか、改めて検証してみる必要がありそうだ。従前、税務申告書の情報・課税標準・税額等は、紙という媒体に記入されていた。その同じ媒体(紙)に申告者や、税理士が自署、押印してきた。これは従来からのいわば慣習で、その書面に記載された内容(情報)をそれぞれが自認していることが当たり前のことと受け止められてきた。また、たとえ何らかの理由で本人が意図しない書き換え(改ざん)がなされても、訂正印のないものは、本人が意図した内容の書き換えでないということも、いわば世間の常識ともいえた。
従来からの書面での申告は、紙という媒体に記入された内容(情報)と、その同一の媒体になされた署名や押印によって、これまでは実にうまく機能してきたといえる。
民間取引の契約にあっても同じであった。もちろん、重要な取引では認印(三文判)でなく、実印が要求されてきたであろうが、認印であっても民事訴訟法228条の「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」という真正成立の推定がはたらく。
e-TAX等の電子手続では電子符号を送信するのであるから、従前の署名や押印は不可能であるとしても、署名や押印がはたしてきた機能・役割を、これらと同等な機能をもった措置がなされることが不可欠となる。「情報通信技術利用法」第3条4項でいう「氏名又は名称を明らかにする措置」とは、電子署名のことをいうのである。
2-2財務省令
平成15年7月14日「国税関係法令に係る行政手続等における情報通信の技術の利用に関する省令」が公布された。この財務省令は、情報通信技術利用法3条の委任を受けて、「電気通信回線で接続した電子情報処理組織を使用して行わせることができる」95の国税手続き定めた。また、同じく同法3条4項の委任により「氏名又は名称を明らかにする措置」を具体的に定めた。この財務省令は平成15年11月4日から施行される。
2-2-1 氏名又は名称を明らかにする措置(電子署名と電子証明書)
省令6条では署名等に代わる措置は「申請等の情報に電子署名を行い、当該電子署名に係る電子証明を当該申請等と併せて送信することをいう」と具体的に規定している。この場合の電子署名とは電子署名法に定める電子署名のことをいう。
2-2-2 電子証明書の範囲
省令では国税関係の電子手続に使用できる証明書については、次の三つを定めている。
イ 商業登記法に基づき登記官が作成したもの
ロ 電子署名に係る地方公共団体の認証業務に関する法律第三条第一項に基づき都道府県知事が作成したもの
ハ イ及びロに掲げるもののほか、これらと同様の機能を有する電磁的記録として国税庁長官が定めるもの
イは、いわゆる商業登記認証局の証明書であり法人に限られる。ロは、公的個人認証制度により都道府県知事が発行するものである。ハは、まだ具体的に指定されていないが、日本税理士会連合会認証局などの民間認証局が発行する証明書ということになる。
2-2-3 e-TAXで求められる「電子署名」
e-TAX制度が導入されるとしても、税法の署名・押印関係の規定は何ら改正されていない。従来どおりであり、署名・押印が電子署名に代わっただけである。
国税関係の電子化のための省令でも、次の税法の署名・押印が電子署名に代わることを明記しています。
一 国税通則法 第百二十四条
二 法人税法第 百五十一条第一項~第三項まで
三 税理士法 第三十条、第三十三条第一項及び第二項並に第三十三条の二第三項
2-3税法の署名や押印に関する規定
e-TAXでも従来の規定に改定は無く、システムは法律どおりの仕様で作られるとすれば紙の場合より、運用が厳格に成らざるを得ない。あらためて「記名」なのか「自署」なのか、検証しておく必要がある。
2-3-1 押印に関する規定は国税通則法で規定
「国税についての基本的な事項及び共通的な事項を定める」国税通則法では、第124条で税務申告書等についての氏名住所の記載、押印について規定し、自署の規定はない。
押印すべきものが外国人の場合、「外国人ノ署名捺印及無資力証明ニ関スル法律」により、押印を要せず、この場合は署名をもって捺印に代えるとある。
2-3-2 法人税法と法人事業税は代表者の自署・押印の規定がある
所得税法や消費税法に規定は無い、法人税・法人事業税の申告書については、法人代表者が自署押印しなければならないことになっている。(法人税法151条、地方税法72の35)
2-3-3 税理士の署名・押印が必要/依頼者の署名・押印も必要 税理士法
税理士法33条により、税理士が税務代理として租税に関する書類を作成し、官公署に提出する場合は当該申告書等に署名押印しなければならず、なお、税理士が署名・押印する場合は、税理士である旨を付記する必要がある。
税理士法33条により、当該申告書等が課税標準に関するもの、または、還付金の請求に関するものである場合は、併せて本人(依頼者)も署名押印することが求められる。
税理士が税務代理として提出する書類は、すべて税理士の自署・押印が必要になり、法人税・法人事業税は、個別法の規定で代表者の自署・押印の必要があり、その他の申告書は税理士法の規定により、依頼者も自署・押印が求められる。届出書等課税標準に関係しない書類は、税理士は自署・押印、依頼者は記名・押印ということになる。
2-4 税務署書面で署名・押印はいかなる機能を果たしたのか
2-4-1 税法上の規定
民事訴訟法228条には「私文書は、本人またはその代理人の署名押印があるときは、真性に成立したものと推定する」という規定があるが、税法にはこのような通則的な規定はない。
署名・押印のもつ機能は次の三つではなかろうか。
1文書に記載された名義人の本人性の確認(印鑑やサインの筆跡など後日、必要なら検証ができる) 申告書に記載された氏名と申告者の一致。
2 本人の意思確認 申告書の内容を本人が自認していることの確認
3 改ざん、否認防止 署名・押印後に他人によって書き換えが行わないようにするため
電子署名によれば、これらの機能が実現可能であり、改ざん防止などは紙の場合よりもより厳格に検出できると思われる。
国税通則法、法人税法、地方税法、税理士法いずれも特に印鑑の種類についての規定は無く、税法の解説書などには次のように書かれている。
国税通則法精解」(大蔵財務協会)では、国税通則法124条により押印すべき印鑑については「個人の場合 書類届出者の印/法人の場合 当該法人の代表者の印 」と説明され、「コンメンタール法人税法」(第一法規)では、法人税法151条で規定する法人代表者の自己の印について「自署した者の印章である。この場合、印鑑登録のある印章であることは要しないが、その者の印章であると一般に識別できるものでなければならい」と説明されている。
2-4-2 e-TAXにおける「印鑑」
e-TAX実施に当たって、納税者・代理としての税理士もともに、何らかの手段で電子署名を行える環境を、自らの責任で整備しなくてはならない。
税理士は、15年11月初旬 日本税理士会認証局から 電子署名を行える環境を取得されることなるが、納税者(法人も含む)に関しては 前述の3種の認証局から、電子署名を行える環境を取得することになる。
e-TAXの際は「書面申告において納税者及び税理士の記名(署名)・押印が必要とされているのと同様、両者の電子署名及び電子証明書の添付が必要」(e-TAXホームページ)とあるが,前述のように押印の際の印鑑の規定はなく、自署及び押印の有無 は、申告書等の提出による申告の効力に影響を及ぼさないとしている。
電子署名を要する「e-TAX」が実施されたとして、e-TAXと書面申告が並行実施された場合、不都合が発生しないか?
現状の法の趣旨のまま施行・電子署名法を適用となると、e-TAXの場合は実印と印鑑証明書を強要され、その上それが欠落した場合、その申請の効力さえ失う。対して書面申告は、認印・記名がであっても、またその欠落の場合でもその「当該書類の効力に影響を及ぼすものと解」されない。
個別法の改正が無いまま実施されたとする、手続上の均衡を欠き、すすんでe-TAXを行う者は少ないであろう。現実的運用と然るべき法整備の必要が無かろうか?また、e-TAXを含む電子政府が予定する印鑑は、その鍵使用目的拡張から否認防止のための署名以外に使用できず、認証・暗号化のためには別途その環境を入手しなければならないことを留意しなければならない。
3-日税連認証局・認証ポリシーの多様化と税理士事務所認証局
3-1 税理士事務所認証局の狙い
仮に 税理士が日本税理士会連合会認証局より、使用目的がe-TAXなどに限定した電子署名環境以外に、下位1位までのユーザーへの電子証明書が発行可能な電子署名環境を提供できるとして、それを根拠に税理士事務所は 「税理士認証局」を構築する。
その状態がe-TAXおいて技術的・法務的見地から可能性かあるか否かの検討は、今後PKIが広く普及させる上で有益と考える。俗に言う三文判PKIの検証である。
3-1-1 現状は認印
現状 認印・記名(署名ではなく)で実施さている税務手続きレベルにあった合目的的「電子署名」
言わば 電子認印の可能性を見出せないか?
財務省令2条2項ハが規定する「これらと同様の機能を有する電磁的記録として国税庁長官が定めるもの」の解釈に、GPKIと相互認証していない認証局選択の可能性は本当にないか?
3-1-2 財務省令における電子署名は、電子署名法第2条1項のみを根拠としている
財務省令2条1項に置いて、求められる電子署名は 電子署名法第2条1項のみを根拠としているところから、電子署名において下記の機能が実現可能であれが、e-TAXにおいて最低限レベルと解釈・許容できないか?
電子署名及び認証業務に関する法律 第二条
この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。
つまり、e-TAXにおいて使用可能レベルを下記のレベル以上とし
1-電子署名を行った者の本人性を確認することができるものであること
2-改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること
この条件を満たす電子署名であれば使用可能とされるよう、電子的行政手続においても複数の認証ポリシーを使用可能ならしめる施策・運用こそ電子署名法が求めるものであり、PKI普及の早道ではなかろうか。
3-1-3 e-TAXでのセキュリティは税理士にかかっている
e-TAXの仕組みとして、税理士と国税庁受付システムの間では、SSLという仕組みで安全に申告データの交信されるように構築されている。しかし、税理士と納税者の間では、現状なんらセキュリティの確保がなされていない。税理士と国税庁受付システムの間・納税者と国税庁受付システムの間で高水準のセキュリティの確保をしようとも、総体として「電子申告システム」は、現状安全なシステムとは言えない。
税理士と納税者間の申告データの交信をS/MIMなどでセキュリティの確保をして、やっと総体としてのセキュリティが確保できるのである。税理士と納税者間の申告データの交信のセキュリティの確保の責務は、税理士にあると認識するのが自然である。
交信のセキュリティが確保できなければ、税理士がノートPC持参して電子署名を求たり、電子署名のために顧問先を事務所に来所していただくことなる。これは本末転倒・時代錯誤である。
3-1-4 税理士事務所認証局が可能になられば、税理士は「PKI普及伝道師」となる
e-TAXがトリガーとなって、国民・利用者が初めて遭遇する電子署名・オンライン手続で「ああ便利なものだな」と感じ、その他の行政手続、民間の文書、社内へも電子化が波及しなければ費用対効果は薄れる。そのためには、身近にPKIの先生が必要である。
現状、税理士は税務のみならず、経営・法務・ITとあらゆる分野で中小企業をサポートしている。この延長線上にe-TAXをとらえるならば、e-TAXに欠くことのできないPKIに関する相当程度の説明責務も期待されているものと認識しなければならない。
そこで、税理士が認印程度とはいえ自ら「税理士事務所認証局」を構築し、登録・発行・失効事務など一連の認証局業務に関わるということは、今後「PKI普及伝道師」としての活躍が税理士に期待できる。民間レベルでのこのような活動は、今後のPKI普及にとって極めて有効である。
3-2 税理士事務所認証局 信頼モデルの選択
選択する上での基準は、
①「できるだけ信頼性が高いパターンから」
②「より簡便な方法」
の2つである。
モデル:1
日税連認証局タイプB証明書→税理士事務所認証局→エンドエンティ証明書
このパターンであればCRL検証も可能/特定認定不要/秘匿用も使える
モデル:2
単位税理士会→税理士事務所認証局→エンドエンティ証明書
これもモデル:1と同様。CRLのサーバー証明書程度は必要。特定認定不要、秘匿用も使える
モデル:3
税理士事務所→ このスタイルは簡便であるが、認証ポリシなどのスキルが相当程度要求される。この場合でも日税連がタイプC(サーバー証明)を発行することによって、いくつかの可能性がでてくる
バリエーション
各事務所が登録発行を行いCRLリポジトリの共同化
3-3「CertWorker」を使って税理士事務所認証局
かかる試みを単なる机上論に終わらせること無く、技術的・法務的可能性を検証したい。
認証局構築のアプリケーションとて、次を使用する。
「CertWorker」という電子証明書の発行から運用までを簡単に行えるユーティリティのパッケージソフトである。
http://www.ace.comp.nec.co.jp/certworker/
この「CertWorker」で認証局を構築し、その過程でのCP及びCPSの学習を通し「運用者」側としての体験をし、そこで発行されたPKIに準拠した電子証明書をもとに、S/MIME・アクロバット文書やドキュワークス文書に代表される標準的電磁的文書へ電子署名・暗号及び検証・復号を実践し、最終的にはe-TAXにおいて顧問先に使ってもらおうというのが狙いでる。
簡易版とはいえそのプロセスは正式の認証局と同じであること、多くの税理士がその立ち上げ・運用の中 実体験で身に付けた知識は、今後ベンダーに対し良きユーザーとしての知識の蓄積ができ、資源調達の際のリスクも回避できると期待できる。
この一連の体験者を数多く輩出することは、失敗が許されない国家施策として「e-JAPAN」・「e-TAX」に、税理士として大きな貢献が出来る一助となるものと確信している。
この文書はJESAP(電子署名・認証利用パートナーシップ)が主催した「電子署名・認証フォーラム」(平成16年2月24日、工学院大学)の電子政府セッションで発表した原稿です。
下記の活動報告を参照してください。
ECOM(電子取引推進協議会)平成15年度事業報告書
http://www.ecom.jp/about/jigyou/houkoku_2003.pdf
財団法人 日本情報処理開発協会 事業報告書
http://www.jipdec.or.jp/ov/disc/h15/hokoku.pdf
「扶養控除等申告書」の電子化に関する試案
税理士 阿部隆幸
税理士 齋藤聰明
電子化・オンライン化は、それ自体が目的ではなく企業、国民の負担軽減、行政の効率化がその目的である。しかし、基本法だけではカバーしきれず、仮に電子化・オンライン化が可能であったとしても基本法がカバーする方式では、企業・国民の負担が軽減されない手続きは多数存在するものと思われる。
本稿は、その一例として「扶養控除等申告書」について検討を試みる。この手続は毎年5 千万件であり、これが電子化されれば企業の負担を大幅に減らすことが可能となる。この電子化のためには電子署名・タイムスタンプ・電子文書の長期保存などのPKI 関連の技術は不可欠である。
1.扶養養控除等申告書とは
扶養控除等申告書とは、サラリーマン(給与所得者)が所得税法194条の規定により、給与支払者に提出する書面である。この手続は毎年5千万件である。平成15年、情報通信技術利用法(行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律)が施行され、国民から行政への申請、届出等がオンラインで行うことが可能となった。しかし、同法は民間を経由する申請、届出には適用されない。所得税法では、扶養控除等申告書は、給与の支払を受ける者が、給与支払者を経由して税務署長に提出するものと規定しており、この手続きもこれに該当する。
e-Japan構想の中で、民間取引(B to B、B to C)や行政への申請・届出(B to G)について、電子化を図るべく、次のような立法措置がなされてきた。
①IT書面一括法(平成13年4月施行) 民間取引で書面交付を義務付けていることが電子取引の阻害要因にあたるとして関連する法律55本を一括して改正。
②商法改正(平成13年) 会社運営の電子化について改正が行われ、この中で会社関係書類の電磁的記録による作成、保存が認められた。
③情報通信技術利用法(平成15年1月施行、一部未施行) 従来、書面が前提であった、行政機関への届出、申請が原則すべてオンラインによることが可能となった。
2.基本法方式が採用された行政手続きの電子化
従来書面を前提とした手続きを電子化するにあたっては、立法措置が必要となる。この立法化にあたって、民間取引については、個別法令を一括して改正する方式(一括法方式)が採られた。一方行政手続きについては、個別法を改正せず、個別法を特別法によって「読み替える」基本法方式が採られた。情報通信技術利用法がそれである。
この法律によって、既存の法律で「書面」を意味する言葉は「電子文書」「電磁的記録」に置き換えられ、「署名」や「記名」を意味する言葉は「電子署名」に置き換えられることとなった。
3. 基本法方式の課題
行政手続きは、その数があまりにも膨大であり、個別法の改正では、到底、時代の趨勢に法律改正が追いつかず、基本法方式が採られたことは、やむを得ないものと思われる。また基本法方式が採られたことから、申請者側の認証局は、ブリッジ認証局と相互認証した認証局証明書が前提とされた。これが民間経由手続きについては、情報通信技術利用法の適用対象外となった要因と考えられる。
しかし、従来の書面を前提とした手続きは、多種多様であり、それぞれ求められる認証レベルによって「記名」もあれば「自署」もある。また「押印」が求められるものも「実印」が要求されるもの、特に印鑑の種類について規定しないものがある。
行政手続きの電子化・オンライン化の為の立法措置として基本方法方式を採る限り認証レベルは「高いほう」に合わせざるを得ない。しかし、既存の法律を改正せず「認印」で間に合う手続きを一律に公的個人認証証明書、商業登記認証局の証明書等とすることは、かえって電子化・オンライン化の阻害要因ともなる。
電子化・オンライン化は、それ自体が目的ではなく企業、国民の負担軽減、行政の効率化がその目的である。しかし、基本法だけではカバーしきれず、仮に電子化・オンライン化が可能であったとしても基本法がカバーする方式では、企業・国民の負担が軽減されない手続きは多数存在するものと思われる。
本稿は、その一例として「扶養控除等申告書」について検討を試みる。この手続は毎年5千万件であり、これが電子化されれば企業の負担を大幅に減らすことが可能となる。この電子化のためには電子署名・タイムスタンプ・電子文書の長期保存などのPKI関連の技術は不可欠である。
4. 「扶養控除等申告書」の電子化のための課題
「扶養控除等申告書」の電子化のためには、法的な側面、それを可能とする技術的な側面と両面からの検討が必要である。
これまで、書面を前提としてきたものは、電子化・オンライン化の中で、必要性がなくなるもの、その役割は変わらないが、電子化、オンライン化にふさわしく制度のあり方が変わってゆくもの、また、そのまま電子化・オンライン化が可能なものがある。したがって、扶養控除等申告書(以下、単に「申告書」という)の電子化の可能性の検討は、申告書が、法的にどのように位置づけられ、どのような役割を担っているかを検討することから始めなければならない。
5. 所得税法は「扶養控除等申告書」をどう規定するか
5-1申告書の記載事項
扶養控除等申告書は、サラリーマン(給与所得者)が所得税法194条の規定により、給与支払者に提出する。この主な記載事項は、次のとおりである。
一 申告書作成者の氏名、住所
二 給与支払者の氏名又は名称
三 給与の支払を受けるものが所得税法上の諸控除を受けるために必要な配偶者又は扶養親族に関する事項、本人若しくは扶養親族が障害者等に該当する場合は、その事実。
これらの事項は給与支払者が給与の支払をするにあたり、源泉徴収税額を計算するために必要な事項である。さらに詳細に言えば、給与支払時に必要な事項と年末調整事務にのみ必要な事項がある。
5-2 記名・押印
扶養控除等申告書は、記名欄があり、押印する欄が2箇所ある。一つは書類作成者(給与の支払を受けるもの)であり、もう一つは給与支払者の受付印である。
国税通則法には税務に関する届出書等の記名・押印に関する定めがあり、この押印は、この規定によるものである。同法は押印すべき印鑑についての定めはなく、通常は認印が使用されている。
5-3保管
所得税法は「経由すべき給与等の支払者に受理されたときは、…税務署長に提出されたものとみなす。」と規定しており、実務上は給与支払者が保管しなければならない。
また、所得税法基本通達は「申告書は、その支払者が保管するものとし、必要がある場合には税務署長に提出させるものとする」としており、給与支払者が保管している。
5-4提出時期
所得税法の規定により、申告書は、毎年最初の給与の支払を受ける日の前日までに提出する必要があり、提出の際に経由すべき給与等の支払者に受理されたときは、その申告書は、その受理された日に税務署長に提出されたものとみなされる。
なお、申告事項に異動があった場合も異動事項を記載して異動が生じた後、最初の給与の支払を受ける前日までに申告書を提出しなければならない。
6. 情報通信技術利用法では電子化・オンライン化できない
情報通信技術利用法は手続のうち書面を意味する用語が存在する手続についてオンライン化を可能とするものであり、オンライン化の範囲は主務省令によって定められる。
同法は「行政機関等は、申請等のうち当該申請等に関する他の法令の規定により書面等により行うこととしているものについては、当該法令の規定にかかわらず、主務省令で定めるところにより、電子情報処理組織(行政機関等の使用に係る電子計算機と申請等をする者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。)を使用して行わせることができる。」と規定しており、この規定から、民間を経由する申請・届出等に適用されないとされている。
扶養控除等申告書の作成者は給与の支払いを受ける者でありその提出先は税務署長であるが、「経由」手続きであるため行政通信技術利用法のオンライン化対象手続とはならない。また、実務上は税務署長に提出されることなく、その保管は給与支払者(企業)である。したがって現状では「紙」を企業が保管せざるを得ないといことになる。扶養控除等申告書の電子的な保管のためには、何らかの立法措置が必要になるものと思われる。
7. 電子化・オンライン化へのアプローチ
電子化・オンライン化の方法を探るアプローチは、まず、その制度自体がどのような意味があり、どのような役割を果たしているのかの分析から始めなければならない。
具体的には、押印にどのような役割があるのか、その書面はどのくらいの保存に耐えなければならないのか、どの程度の改ざん防止措置が必要かなどの検討である。
次にこれらで明らかとなった事項を電子的に実現する技術面からの検討が必要となる。ここで重要なことは、必要以上の条件を課すことによって、利便性が損なわれてはならない。もうひとつは、必ず書面手続との並存期間があるということである。同一の手続を書面で行うかオンラインで行うかによって、「書面」「電子・オンライン」の特性の相違から派生する以外の差異があってはならない。
また、費用負担という点でも、オンライン化、電子化は、安価に実現できなければ意味がない。
7-1何がオンライン化、電子化のために求められるか
以上のような視点から、扶養控除等申告書の電子化のために求められる機能の要件を検討してみる。
認証レベル
給与支払者、行政庁からみて、文書の名義人(給与受給者)が作成したものであることが確認可能であること。
給与支払者が収受した事実(この情報によって源泉徴収事務が行われる)。
作成後、改変が、なされていないことが確認できること。
情報が更新される可能性があるため、その変更履歴が残ること。その変更は作成者が行ったものであることが確認できること。
否認防止措置
この文書の記載事項は、氏名、住所、生年月日などの事実を記載するものであって、他人が確認することが比較的容易であり、意思確認という意味での否認防止措置は重要ではない。
情報流出防止
この申告書に記載されている事項は個人情報であり、目的外使用や閲覧、他への情報流出は許されない。高度な防止措置が求められる。
保存期間
法律の規定では、給与受給者が給与支払者を経由して税務署長に提出することとなっているが、実務上は、給与支払者が「保管」しており、明確な保存義務期間は法定されていない。
しかし、税法が規定する行政処分の除斥期間から、7年の保存に耐えなければならない。
費用
作成者の費用負担はゼロであるか、きわめて安価でなければならない。
給与支払者にとって、源泉徴収事務にかかるコストが書面より安価であるか、利便性が向上するものでなければならない。
7-2電子化の意義、優位性
扶養控除等申告書の電子化、オンライン化にはPKIの技術が不可欠である。これまでは、電子化するための要件について記述してきたが、以後は電子化にPKIが使われることによるメリット、優位性について検討する。
8. 「扶養控除等申告書」と年末調整制度の廃止論
8-1 年末調整制度の廃止論
年末調整制度は、昭和22年の申告納税制度導入と同時に採用され、シャウプ勧告(昭和24年)では、給与所得に係る源泉徴収制度について、従業員に対する源泉徴収税額の通知や雇用主による源泉徴収税額の即時納付、年末調整による調整額を最小限度に止めるべきことなどのほか、年末調整手続を税務署に可能な限り移管すべきことが提案されている(シャウプ使節団日本税制報告書Ⅳ巻D11頁)
最近の税制調査会や経済財政諮問会議においても、納税者としての意識の醸成の観点から、年末調整制度の廃止も言及されている(税制調査会中期答申『わが国税制の現状と課題―21世紀に向けた国民の参加と選択―(平成12月7月)』141、142頁)。
8-2 年末調整制度の完全廃止の非現実性
現状 民間企業において保存・税額計算基礎データとしての「扶養控除等申告書」が毎年5千万件あり、年末調整制度の廃止と同時に、確定申告書を提出する納税者数が一挙に増加した場合、如何なることにあるだろうか?
課税庁の収受・整理といった単純な事務負担もさることながら、記載内容に係る審査等の必要な事務を考慮すると、書面の確定申告手続を前提に、現在の課税庁の執行体制では、やはり年末調整制度の完全廃止は非現実的であるといわざるをえない。
16年2月2日 名古屋国税局管内でスタートしたe-Taxシステムが、その非現実性を薄めたとしても、書面申告の併用が依然避けられない以上、完全な年末調整制度の廃止の断行は不可能である。
個人住民税の特別徴収制度も考慮した場合、給与支払時の源泉徴収制度そのものは維持したうえで、年末調整制度の廃止を論ずるのが現実的である
したがって、年末調整制度の廃止論を前提としたとしても、「扶養控除等申告書」の電子化のため検討は、その必要性は失わないと思われる。
9. 「扶養控除等申告書」と個人情報保護
9-1 「扶養控除等申告書」の取り扱い
申告書の記載事項における「申告書作成者の氏名、住所・給与支払者の氏名又は名称」もさることながら、所得税法上の諸控除を受けるため「必要な配偶者又は扶養親族に関する事項、本人若しくは扶養親族が障害者等」の情報の取り扱いには、特別細心の配慮が必要である。
「扶養控除等申告書」の裏面に 記載上の注意が下記のようにある。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
「障害者等の内容」欄には、それぞれ次の事項を記載してください。
イ障害者(特別障害者)……障害の状態又は交付を受けている手帳などの種類と交付年月日、障害の程度(障害の等級など)。また、控除対象配偶者や扶養親族が障害者(特別障害者)のときは、併せてその人の氏名(特別障害者に該当する人のときは同居の有無)
ロ老年者……平成16年中の所得の見積額
ハ寡婦又は寡夫……死別、離婚の別とその年月日、夫又は妻のいずれかが生死不明となった事由、生計を一にする子の氏名及びその子の平成16年中の所得の見積額、2の「 寡婦」のロに掲げる寡婦、「 特別の寡婦」又は「 寡夫」に該当する人については、これらのほか平成16年中の所得の見積額
ニ勤労学生……学校名と入学年月日及び平成16年中の所得の種類とその見積額
--------------------------------------------------------------------------------
自らの所得税法上の諸控除を受けるためやもうえないとしても、申告者に障害者の扶養家族があり、障害の程度がどの程度で、離婚暦の有無など、通常の企業活動では本来知りえないものであり、その知りえた情報の取り扱いなど極めて悩ましい問題である。
日常の給与支払時に必要な情報・年末調整事務に必要な情報という税務目的のものとはいえ、その情報の取り扱いに関しては、税務目的達成の範囲を超えた「情報管理」の仕組みが不可欠である。しかし、現状その取り扱いは、その情報の重要性に見合ったと取り扱いがされているか、再度検討すべきであろう。
9-2 「扶養控除等申告書」の電子化と情報流出防止
プライバシーの領域まで網羅する「扶養控除等申告書」は、企業の情報の中でも特に注意して取り扱わなけばならない。個人情報への不正アクセス、紛失、破壊、改ざん、漏洩防止を目的とした仕組みが不可欠である
例えば
1-勤務期間内外を問わない目的外利用の禁止
2-利用は、権限のあるのみとし、指揮命令者の指示に従う
4-利用したアクセスログが蓄積され、ログが改ざんされないこと
5-保安上安全な場所に保管する
3-保管・廃棄は、規則・指揮命令者の指示に従う
4-受け渡し時、非漏洩の仕組みを構築
電子化に求められる要件は、前段の発表で下記のようにまとめられた
1-認証レベル・・・・・文書の名義人の確認可能性(一義的に 給与支給者にとって)
変更履歴の確認と変更者の確認
2-否認防止措置・・・・意思確認という意味での否認防止措置は重要ではない
3-情報流失防止措置・・目的外使用や閲覧・情報流出防止の高度な防止措置が求められる。
4-保存期間の担保・・・税法が規定する行政処分の除斥期間から、7年の保存
5-負担費用の考慮・・・作成者の費用負担はゼロであるか、きわめて安価
10-「扶養控除等申告書」の電子化には、自前PKIが不可欠である
電子化に求められる要件での認証レベル/情報流失防止を考察するとPKI技術は不可欠であり、負担費用を考慮すると自前PKIと市販の汎用性のあるPKI対応のアプリケーションを選択するのが最善ではなかろうか。
10-1 自前PKIの構築
認証局構築のアプリケーションとて、次を使用する。 「CertWorker」という電子証明書の発行から運用までを簡単に行えるユーティリティのパッケージソフトである。
http://www.ace.comp.nec.co.jp/certworker/ この「CertWorker」で認証局を構築し、その過程でのCP及びCPSの学習を通し「運用者」側としての体験をし、そこで発行されたPKIに準拠した電子証明書をもとに、S/MIME・アクロバット文書やドキュワーク文書に代表される標準的電磁的文書へ電子署名・暗号及び検証・復号を実践する。
簡易版とはいえそのプロセスは正式の認証局と同じであり、やはり自前PKIのために、自前のCP及びCPSの作成は困難と思われるが、規模・用途・使用範囲が限定されたもので、専門家によりそのフォーマットの標準化されればクリアーできるであろう。
今後社内業務の電子化を考慮すると、総務課などの社内担当部署は、単なる利用者以上のPKI知識が求められることを考慮すると、電子化の全社的実践前にPKI学習の最善のトレーニング環境を提供することにもなる。
また、全社のシステム・人員配置の関係で、自前認証局の選択が不可能としても、実験的認証局の立ち上げ・運用の中 実体験で身に付けた知識は、今後ベンダーに対し良きユーザーとしての知識の蓄積ができ、資源調達の際のリスクも回避できると期待される。
10-2 CertWorker証明書の発行---CertWorker証明書リクエスタcertreq.exe
CertWorkerでは、自前認証局に利用者の秘密鍵が残らない形式で証明書の発行が可能である。手順は下記のとおりである
① 自前認証局は「鍵生成用ディスク」を作成し、利用者へ手渡しまたは送付します
② 利用者は「証明書リクエスタ」を実行して鍵ペアを生成し、証明書要求(PKCS#10)を作成、自前認証局へ返送
③ 自前認証局は証明書要求から証明書(PKCS#7)を発行し、手渡す。
利用者はフロッピーディスク等の外部記憶媒体に含まれている「証明書リクエスタ(certreq.exe)」を実行し、証明書と秘密鍵をWindowsシステムストアにインポートするか、PKCS#12ファイルにエクスポートすることができます。
操作が完了した時点で、キープしていた秘密鍵情報がクリアされ、再度鍵ペアの生成を行えるようになります。
10-3 専門士業の果たす役割
現状、税理士は税務のみならず、経営・法務・ITとあらゆる分野で中小企業をサポートしている。この延長線上に平成16年2月2日にスタートしたe-TAXをとらえるならば、e-TAXに欠くことのできないPKIに関する相当程度の説明責務も期待されているものと認識しなければならない。
関与先企業が自前認証局構築の際、認印程度とはいえ、税理士が積極的にその構築に関与し、登録・発行・失効事務など一連の認証局業務に関わるということは、今後のPKI普及にとって極めて有効である。
10-4 専門士業と技術者との連携
専門士業の税理士は、税の専門家ではあるが、ITの専門家でも・PKIの専門家でもない。とはいえ、電子申告の税理士にとって、関与先の企業がITソリューションへ新規投資をする際、確かなセカンドオピニオン役を務める知識・ネットワークは不可欠であるといえる。
自前認証局が構築されたとして、署名を可能せしめるアプリケーションは、選択に困るほど市販されてはいないと思われる。
アドビ社のアクロバット6、ゼロックス社のドキュワークス5、これらも電子署名・検証の作業も比較的平易に行うことができ、同アプリケーションを組織的・積極的に日常業務に取り入れることによって、企業内のペーパーレスは促進される。
また、別に一つの方向性として、個別のPCにインストールする署名アプリケーションではなく、ブラウザーのプラグインとして作動する「WebSign」をWebサーバーに.インストールすることによって、最小限の準備で全社のPCが電子署名・検証の環境を整備することも考えられる。
また、PKI普及黎明期にあって「WebSign」の優れている点は、作業として簡単に電子署名・検証が可能であるということのみならず、署名・検証の作業のなか、電子署名の重要性・意味合いの理解を促するチュートリアルが繰り返し表示されるように作りこまれている点である。
税理士がITの専門家になるのでも・PKIの専門家になろうというのではなく、関与先の企業がITソリューションへ新規投資をする際、一部のベンダーのソリューションに偏ることなく、信頼されるセカンドオピニオン役を務める知識・ネットワークを自在活用するためにも、当該専門技術者との日常的な情報交換は今後さらに重要となるであろう。
電子申告は日本を救う! (齋藤聰明投稿、「東京税理士会葛飾支部60周年記念誌」)
1-日本税理士会連合会認証局の存在意義
いまさら「何言うか!」と叱られるかもしれないが、日税連も東京会を含め多くの単位会が、電子申告の所掌を「情報システム委員会」に担当させたところに最初の「ボタンの掛け間違」があったのだと考えます。 真っ当に考えれば、電子申告は「制度部」の所掌でしょうし、制度部の目で電子申告を検証すべきだったと考えます。しかし、電子申告はパソコンを不可欠とし・パソコンの操作と関連するから
と情報システムの所掌になってしまったです。電子申告はまさに制度の話です。 法律の話なのです。書面ベースで税理士制度・行政手続きを検討してきたしかるべき所掌が責任を持って担当すべきものであると考えます。
遅き感もありますが、電子申告はパソコン・プロトコル等の話ではなく、制度の問題として深く検討すべき時期なのです
「税理士が、電子申告に際し、(公的個人認証サービス)による電子署名をしても、日税連認証局による電子署名をしても、その法的効力に相違がないのだとしたら、日税連認証局の設立運営に莫大な資金を投下するのは無駄である。」という意見があります。
確かに「公的個人認証による電子署名と日税連認証による電子署名の法律上の効果」を考察する
と一面そのような帰結に至るのも理解できなくも無い。
税理士法33条3項は「税理士は、前二項の規定により署名押印するときは、税理士である旨その他財務省令で定める事項を付記しなければならない。」としている。資格証明の問題です。
ところが、電子署名法施行規則第6条八項は「電子証明書に利用者の役職名、その他の利用者の属性(利用者の氏名、住所及び生年月日を除く。)を記録する場合においては、利用者その他の者が当該属性についての証明を認定認証業務に係るものであると誤認することを防止するための適切な措置を講じていること。」と規定する。
ややまわりくどい言い方であるが属性証明(資格など)は、認証局の発行する証明書の正式な項目でないということである。 電子申告においても税理士がその資格を明示して行うことは当然のことである。しかし、この点では、現行規定は十分ではない。我々が検討して解決すべき課題なのです。 電子署名法における電子証明書では、「税理士」という属性を電磁的に表現できないのです。 電子証明書が暗黙に属性や権限を表現する手段として、日税連認証局の構築となったわけです。 つまり、当該認証局が被認証者範囲を限定し(CPSによって)、結果として属性・権限を表現できるのです。 そこに日本税理士会連合会認証局の存在意義があるのです。
2-納税者の電子署名省略に疑問
ここ1~2年は喫緊の課題でとして電子申告普及の数値目標が話題になっている。
東京税理士会も電子申告推進10の提言(2006年3月第590号)を一年前に出し、 提言のほとんどが現実化しており、半年以内に改善・改正案が提案されております。 電子申告に関して、国税庁は納税者の声・関係各位の改善提案を傾聴し、極めて迅速に課題が解決されいるようです。
平成18年6月日本税理士会連合会からも、レベル0~レベル5までのCMM(capability maturity model)みたいな能力成熟度モデルが提案され、レベル0の電子証明書を入手していない状態からレベル5の顧問先の電子申告を行なっているレベルまで、 平成22年までにレベル5で50%達成が数値目標と提言された。
平成19年度税制改正の大綱(平成18年12月19日)が発表され、この中で電子申請のインセンティブとして「税額の控除」や「添付書類の省略」などが明記された。電子申告の活用推進を図るねらいが見受けられる。
電子申告普及に向けて、次のような斬新な施策が注目される。1.電子署名の省略 2.電子申告の税額控 3.第三者作成書類の添付省略 4.税務関連書類の電子化 5.電子申告等証明制度の創設、どれをとっても今までの国税局では考えられない切り口である。
ただ、ある意味玉石混合というか、本当に納税者の利便性・実効性のある電子政府実現へ向けた施策と単に電子申告の数を増やすためのやや誤った施策が混在しているように感じられるのです。
その「やや誤った施策」とは 1の電子署名の省略のことである。
政府が公開鍵基盤(PKI)を機軸とした電子政府を選択した以上、私を含めた多くの税理士が現在如何なる業務フローを実施しているか否かに関わらず、 その新機軸・ルールに従った業務フローを再構築せざるをえないと考えています。個人的には非常に悩ましく・厄介ではありますが、実効性のある電子政府実現にあって、税務行政単独で存在するものでもなく、全体的整合性・最適化の中に存在する以上、やもうえないと覚悟していました。 しかし、新機軸が一方で「国民の利便性」を御旗にするならば、ほんとにそうなのか検証する責務を専門士業は担わなければならないとも考えます。
いま求められている(と私が思っている)「より早く・より安く・より高い顧客満足」の実現は、ネット環境なくしては不可能と思います。 しかし、論理武装もないまま、やれセキュリティだの、やれリスクだのと盲目的に不安をつのらしても無意味ですし、全体を鳥瞰しないままの猛進ではE-JAPA戦略にいう「日本再生の秘策」も血税を大量投与した箱物行政の変化形に終わってしまいます。
ネット環境・デジタル化のどこが危険で、何をどうすれば回避できるか、回避できる手段をどのように扱えば脆弱性を補強できるのか、冷静な目とネット社会におけるリテラシーが税の専門化としての税理士にて求められると感じています。 電子申告を鳥瞰して、一部を除いてなんら目新しいこともないし、長年かかって効率化に磨きをかけて事務所の事務フローを捨ててまで選択したくなるようなシステムとも思えません。
電子申告もネット環境を前提に開発さているのは当然のことです。よって、電子申告には、危険極まりないネット環境・デジタル化を、安心して非対面で相手を確認し・秘匿性を保持する仕組みが組み込まれています。 その仕組みが 電子署名・電子証明書と表現される公開鍵基盤(PKI)なのです。 この公開鍵基盤(PKI)なくしては安全な電子商取引は成立しないし、この公開鍵基盤(PKI)こそ新しい市場を開拓し・新しいビジネス誕生のトリガーとなる「日本再生」の救世主なのだと確信しています。 もし、電子申告をやってなにか得があるとすれば、この公開鍵基盤(PKI)スキルが身につく・スキルが身につかないまでもその大切さを感じ取れることでしょう。 どちらかというと電子申告の操作など末節なことで、電子申告を介して、いままで未体験の公開鍵基盤(PKI)を顧問先とともに如何に関われるかが、我々にとっては重要なことなのです。
ただ 単に電子申告の数を増やす目的で「税理士関与の納税者は電子署名不要」を可とするならば、本末転倒・実効性のある電子政府構築の阻害・世界一のIT国家などほど遠くなりはしないか懸念するところです。
わたしは単なる理想主義者ではありません。理想と現実の乖離を絶対拒絶するものでもありません。受け入れざるを得ない現実と曲げてはいけない理想の境目があることも知っていますし、「あるべき姿」への継続的改善の必要性も知っています。電子申告も電子政府もともに、世界レベルから比較すると発展途上国と言わざるをえません。今後府省は横断的に顧客としての国民満足度を高めるように電子申請全般を改善されていくと思われますが、まだ仕掛品の状態です。したがって、長年かかって効率化に磨きをかけてきた事務所の業務フロー全てを廃棄する必要はないと思います。 あくまで、顧客満足・事務所内満足の視点と自らの戦略に基づいて、新「業務フロー」を構築すればよいのであって、ベンダーから高額な電子申告対応セットを購入し、準備完了とはいかないのです。
「電子申告」の目指すものは、そんな低レベルのものではないと信じております。
私の中では「電子申告が日本を救う!」、そんな使命が電子申告に課せられていると信じています。
3-パソコンを過信せず、専門家としてアナログ視線で検証を
電子申告における「控え」の件ですが、単に「控え」には法的根拠が無いことを理由に、「受信通知」をもって「控え」を実現したという課税庁の説明を鵜呑みすべきではないと以前から言い続けてきました。(平成19年度税制改正平成20年1月4日より電子申告等証明制度の創設として、電子申告の「控え」が実現)
慣習としての法があり、それがうまく機能し、現実の世界で欠くべからざるものとして存在してきたのであるならば、書面における「控え」もシステムに具現化しなければならない「開発項目」です。 技術的はそれほど困難ではないはずです。 現実、書面での「控え」は第三者への証明機能をしっかりと担ってきた。 「受信通知」をもって「控え」を実現とすることは、「国民の利便性」実現の上で是認はではない。利用者側が与えてきたに過ぎない「証明機能」といえ、それを求める多くの声で、電子申告等証明制度の創設として、電子申告の「控え」が実現したと評価されるべきである。(ただし、現状まだまだ不満、実際の電子申告等証明制度は多くの改善点はありますが)
今回の電子政府構築にあっては、行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律を通則法的に機能させ、「読み替え」・「置き換え」で、税法に限らず個別法を一切改正せず行った。
電子申告の「控え」の問題が解決したとしても、当該電子申請の本格稼動がまだなので明言できないが、単に「読み替え」・「置き換え」だけでは、「電子の手続き」=「紙の手続き」とは説明しきれない事案が今後多数でてくるでしょう。
十把一絡げ式に電子政府構築の為の法的環境整備をするのではなく、個別法を丹念に検証し、当面のネット社会に即応した法の改正・改変・廃棄をしなければならないと思います。
プログラムを診るというのではなく、プログラムをプログラマー任せ・出来上がったアプリケーションを所与とするのではなく、 そのアプリケーションが、ほんとに当該法律が予定している効果を実現しているのか検証しなければならないということです(これは行政側自身の課題であり・我々自身の課題です)。 「これはパソコンの話だから、君らうまく処理してね」ではなく、アプリケーションといえども法に関わるものである以上、一度は直に関わらざるをえないと思います。
電子申告と「どのような信念」を持って関わるかは税理士制度にとっても極めて重要なことです。 何が何でも電子申告は「数」というのでは時代を見間違えます。まずは顧問先のIT化支援が先に来るべきと考えます。電子申告を顧問先IT化支援のトリガーと位置づけるのも、電子申告を顧問先IT化支援の成果と位置づけるのも、それぞれ個々の税理士の戦略ではありませんか。
電子化が情報漏洩事故を防ぐ
パソコンやインターネットの普及、電子化が情報漏洩事故の原因となっているということはいわば常識である。しかし、ここでは、あえて「電子化が情報漏洩を防ぐ」ことを論じたい。本稿は、まず情報漏洩事故の実態と個人情報保護法の安全管理義務について述べ、電子化こそが安全管理の手段であることを結論とする。
情報漏洩事故とは
情報漏洩事故といえば大げさに聞こえるが、現実はもっと身近なものである。日本情報処理開発協会プライバシーマーク事務局の「平成17年度の個人情報の取扱いにおける事故報告にみる傾向と注意点」によれば情報洩れの原因として誤配送等が71.5%、メール配信ミスが7.9%で、これだけで80%である。置き引きや盗難の15.2%を加えると事故の大半が、身近なものであることがわかる。業務に即して具体的に考えてみると、送付先を間違えて書類、FAXやメールを送ってしまった、カバンを置き忘れた、盗まれたなどであろう。注目すべきは、大半がインターネットとは関係がない「ささい」なミスであることだ。
個人情報保護法の規定
個人情報保護法の背景には、電子データの大量性や特性、電子社会の進展があることは疑いない。法律が施行され二年であるが、いまだに誤った解釈があるようだ。その一つが法律の主旨である。この法律は「個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護」(第1条)することを目的としているのであり、個人情報の利用や収集を禁止しているものではない。もう一つが、この法律によって安全管理義務が課せられる個人情報取扱事業者の範囲であり「5千件」なければ関係ないというものである。
まず、第一であるが個人情報保護法という名称からか、プライバシー保護一般と同一視し、個人情報の収集、保持、利用の禁止を規定しているかの誤解である。個人情報保護法は収集、利用の禁止を規定しているのではなく、個人情報の利用が有用不可欠であることから、取扱事業者に収集利用について一定の義務を課しているのである。法律の規定する「個人情報の取扱い」とはきわめて範囲が広く、ほとんどの日常業務が、これに該当する。名簿等の個人名の集合物の取り扱いだけが対象ではない。
第二は「5千件」である。法律は個人情報取扱事業者から除外される者を「個人情報データベースを構成する個人の数の合計が過去6ヶ月以内のいずれの日においても5千件を超えない者」と規定している。このデータベースとは電子化されたものに限らず、検索が可能な状態に整理されたものを言う。この5千件とは顧客数や会員数ではない。5千件には受託加工中のもの、税理士でいえば顧客の処理データも含むのである。経済産業省のガイドラインによれば、コンピュータ処理されたものをプリントしたものもデータベースに該当するとしているので、年末調整ソフトから出力したもの等はすべて件数に入るということになる。この他にどこにもある顧客名簿、メールの受信、発信履歴など等を考えると「事業の用に供する」個人情報を数えることはまず不可能である。更に年末調整や給与計算に関しては「雇用管理に関する個人情報」として厚生労働省の告示があり、これらを受託すれば、この規定による義務も間接的に発生する。
これらを考えると個人情報保護法上の義務者であるか否かは関係なく、個人情報保護法に準拠した業務のあり方を考えなければならない。情報洩れは、内容によっては当事者にとってのダメージは決定的である。
安全管理とは
では、法律はどう規定しているのであろうか。「個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失又はき損の防止その他個人データの安全管理のため必要かつ適切な措置を講じなければならない」これだけである。この点では主務官庁がガイドラインを作成することになっており、各省庁から公表されている。ガイドラインの中でも最も詳細なものが経済産業省のそれであり市販の解説本のほとんどが、これに沿ったものとなっている。しかし、いずれも記述が大企業向けであり、そのままでは中小企業や税理士事務所には関係がないか、あまりにもハードルが高い。しかし、税理士事務所が取り扱う情報の量、重要性から考えると法律上の義務の有無にかかわらず、安全管理は必須である。安全管理とは「漏洩防止」と「滅失予防」である。滅失の予防とは、紛失しないこと、データを壊さないことということになるが、ここでは特に漏洩防止について考えてみたい。
電子化こそ安全措置
先に述べたように、漏洩原因の大半は、ささいなミスである。しかし、どれだけ注意しても、間違いは起きうる。しかし、間違って送信(送付)しても相手が、これが読めないとなったらどうだろう。書類を盗まれたとしても取得した者が、内容が読めないとしたらどうだろう。こんなことは書類では不可能であるが、電子データでは、このような措置が簡単である。
このように、正当な権限がある者だけが、その情報を見ることができるようにする措置を広い意味でアクセス管理と呼ぶことができる。アクセス管理というと難しそうであるがそうではない。鍵付きの書庫に書類を入れておけば、それは鍵を持っている者だけがそれを見ることができる。この権限の委譲は鍵を渡すことで簡単である。アクセス管理がなされていれば、ミスがあったとしても情報漏えいは防ぐことができる。電子申告時代の到来である。業務の多くが益々電子化する一方で、電子データやパソコン、インターネットへの不安の声も聞く。しかし、普通に注意すれば電子の方が安全である。
例を挙げよう。家に鍵をかける、重要な書棚に鍵をかける、これは当たり前である。しかし、パソコンの起動管理はどうなっているだろうか。パソコンも鍵がなければ起動しないようにしておけばよい。この鍵が「パスワード」では不安だし、第一面倒である。「鍵」とは、これがないと、パソコンが起動しないようなものであり、周辺機器として、またはソフトウエアとして各種販売されている。この「鍵」は現代の技術では家の鍵や書架の鍵を壊すより難しい。
電子化の優位性は暗号化にもある。電子データは暗号化が簡単である。税理士の業務では資料の収受、申告データの受け渡しなど、顧問先とのデータのやり取りが日常的である。これも可能なものすべて電子化すれば暗号が使える。暗号と言ってもおおげさに考える必要はない。従来であれば専用線の架設が必要な安全がインターネット技術の進展で、高度な技術や知識も必要なく誰でも手に入る。
積極的な業務の電子化で、情報漏洩事故を防ぐことができる。
Bチーム経理ナビガイド2
3分で「請求書」ができる
経理ナビを使うと3分で請求書を作ることができます。
ステップ1(ファイル作成)
インストールが終わったら、自分の会社用の「経理ナビデータファイル」を作ります。このファイルに全部のデータが入ります。いわば入れ物です。
「データ管理」メニューから「新規作成」を選んでください。
(1) 事業所名 請求書に表示されます。(株)とか省略しない正式な名称を
(2) 郵便番号や住所も同様ですが、空白のままでも請求書は作れます
この項目は個別に変更が可能ですから、わからなければスキップ(気にせず次へ)
会社のロゴがあれば、ここでロゴのファイルを指定して組み込んでください。
社印も同様です。
必要なければここもスキップ
ステップ2(得意先を登録)
取引カレンダーが出てきますから、請求書を発行する日を選んでクリックしてください。
右側にある「請求書の発行」というボタンを押すと請求書の作成画面が出てきます。
ここで「得意先」ボックスの「+」ボタンを押すと新規の得意先の登録ができます。一度登録すると次回からは、登録する必要はありません。
得意先の登録は(1)基本、(2)連絡先、(3)取引の順で設定します。
「基本」では、請求先の名称を登録します・
ポイント
請求書に表示されるので必ず正式な名称を使う
「御中」や「様」は別の箇所で指定するので不要
略称は、「株式会社」等は省略した方がよい
検索キーは必ず設定する
※ 検索キーは後日同一の得意先に請求書を発行する場合や売上帳、売掛回収帳を探すためのものです。得意先名のローマ字3文字くらいは設定しておきます。
(例)山田産業なら「YAM」
連絡先は請求書の住所欄に表示されます。
住所が不要なら省略できます。後日得意先台帳メニューで追加、訂正ができます。
ここで「御中」や「様」を設定します。
ポイント
急ぐなら全部省略してもかまいません。
取引設定
取引区分や入金口座などの設定をします。
ポイント
税処理は、請求書の消費税の取扱い。いずれかを選択
税処理は請求書作成段階でもう一度選べます
入金口座は、請求書の振込口座として印字されるので必ず記入
回収サイクルも必ず記入
開始残高は記入不要
自社担当者は必要なら記入
※ 回収サイクルが決まっていなければ基本設定のままで。
金融機関名は「+」ボタンを押して必ず設定。
請求書に振込先として表示されます。
ポイント
開始残高はゼロのままで。設定不要。
ステップ3 請求書作成
ワープロで請求書を作るのと同じ感覚で請求書が作れます。
品名、数量、単価、金額などの項目を入力します。
ポイント
金額欄以外はすべて省略可能です。
明細欄(下部)に入力すると「ご請求額」欄が自動的に計算されます。![]()
商品名は次回以降も使えますから、商品コード欄をクリックして、ここで商品台帳を作っておいたほうが便利です。
おなじみの「+」ボタンを押すと商品台帳の登録ができます。
ポイント
名称以外はすべての項目を省略できますが「検索キー」だけは省略せず入力してください。検索キーは、とりあえず商品名のローマ字3字。
ステップ4 請求書印刷
作成が終わったら印刷です。
Docuworkusドキュワークを使っているなら、まずドキュワークで出力してみます。
明細設定
請求書の項目表示の変更ができます。
送付メモ
必要なら「送付メモ」ボタンを押して、書き換えてください。
ポイント
送付メモを印刷しないこともできます。
ここで変更すると以後すべての請求書に反映されます。
印刷ボタンを押して印刷の設定をします。
一括印刷を選ぶと一定期間の請求書をまとめ印刷できます。
請求書の色もここで指定します。
印刷の「詳細設定」で、印刷する項目を設定します。
ポイント
「支払期限」を請求書に印刷したくないときは、ここでチェックをはずします。
「送付メモ」も同様です。
もっと使ってみよう
経理ナビで請求書を作ると、回収管理に使える、帳簿が自動的にできる、資金繰り予定表ができるなど、意識しなくとも作業が済んでいます。
どうせなら、他の機能も使ってみましょう。
「経理ナビ」の帳簿の活用
経理ナビの帳簿オプションを導入すると次の帳簿が使えるようになります。
1.預金通帳
2.現金出納帳
3.売上帳
4.売上回収帳
5.仕入帳
6.買掛支払帳
それぞれに役割と特徴がありますが、従来の会計ソフトと違う特徴があります。その最大の特徴は、帳簿は「作る」ものでなく 「出来ている」という考えが根底にあるということです。
会計と経理
企業が帳簿を作成する目的はといえば、企業の活動を記録して、最終的には決算書をつくる、その構成部分としての個々の帳簿という考え方があります。これは、簿記の目的として当然です。この考え方からすると「現金出納帳」や「預金出納帳」は、帳簿体系全体の中の一構成部分ということななります。
複式簿記の帳簿は「仕訳帳」と、これから転記して作成する「総勘定元帳」を主要簿と呼び、これ以外を補助簿と呼びます。預金出納帳や売掛帳等は、補助元帳であり、総勘定元帳の構成部分です。この帳簿の最終的な出口は決算書(貸借対照表、損益計算書)であり、1事業年度の損益を計算し報告することを目的としています。
これまで、複式簿記の帳簿だけが正式な帳簿であると考えていた方もいると思います。 しかし、企業活動で必要になる帳簿はこれだけではありません。企業は請求書を発行し、その代金が回収されたかどうか管理しています。また、支払も同様です。これらの日常的な業務では、複式簿記で求められる帳簿だけでは不足です。むしろ、売掛金管理や支払管理の帳簿のほうが、馴染みがあるといえましょう。ところが、これらは、特に形式というものがあるわけではなく、各社各様にやっています。
経理ナビが準備する帳簿は、このような日常的な経理業務に使うことを考えて作られています。しかし、それだけでなく、経理ナビで「出来た」帳簿は、会計ソフトに書き出し、複式簿記の「仕訳」データとして利用することができます。
売掛の消し込みはどうする
請求書を発行すれば、そのお金が入ってきたがどうかの消し込みが必要です。売掛金という債権の管理です。日本では古来、この作業を「帳消し」と呼んだそうです。債権記録(大福帳)を消し込んで消滅した債権と、未回収の債権を管理していたのでしょう。
では、現代ではどうしているかといえば、やはり「帳消し」は、必須の作業で、何らかの形で、どこでもやっています。
売掛帳では消し込み作業はできない
帳消し作業で「売掛帳」は、便利でしょうか。「売掛帳」とは、得意先別に1ページ作られ、 左に請求、右に回収が日付順に記帳され、残高が計算された帳簿のことで、いうまでもなく、これが標準的な帳簿です。 この帳簿を消し込みに使うには欠点があり、不便です。日付順であり、請求と回収の関連づけがなされていないので、 分かり難いのです。しかし、ある一定期日(例えば今月末)債権残高の検証のため、この形式はどうしても避けられません。まわりくどい説明ですが、実際に消し込み作業をやっている人なら売掛帳(売上帳)で消し込みはできないということは、すぐにわかると思います。なぜなら、消し込み作業は、 売掛帳を使わず独自の方法でやっていると思われるからです。
現代の「帳消し」は「売上回収帳」で
経理ナビの「売掛回収帳」は、この消し込み作業をやるために特化した帳簿です。売上債権とその回収は関連づけがなされています。 実際に試してもらうのが一番手っ取り早いのですが、経理ナビを使うと「消し込み」は、次のようになります。
経理ナビで請求書を発行すると
経理ナビで請求書を発行(若しくは売上を登録)すると次の帳簿が自動的に作成(記帳)されます。
売上帳の請求欄
売上帳の回収欄(予定としてブルーで表示)
売上回収帳の売上金額欄
売上回収帳の回収金額欄(予定としてブルーで表示)
預金通帳の入金欄(予定としてブルーで表示)
売上帳は特定の期日(月末等)の債権額の合計を把握するために必要です。
売上回収帳は「消し込み」作業に使います。売上回収帳の消し込み作業は、予定通りに入金があれば、回収欄をチェックします。予定より遅れた、 若しくは一部しか入金されなかった場合は「回収修正」という作業を行います。
回収帳で消し込み作業をすると
売上回収帳で消し込みをすると次の帳簿に記載済んでしまいます。
売上帳の回収欄の予定のブルーが確定の黒に変わり売上帳の記帳が完成する。
預金通帳のの入金欄の予定のブルーが黒に変わり預金通帳が完成する。
最初の話に戻りましょう。経理ナビの帳簿は「作る」のではなくて「出来ている」のです。こう考えて運用すると、 このソフトの使い方が見えてくると思います。
現金出納帳・預金通帳
経理ナビの現金出納帳には、会計ソフトと違う、いくつかの特徴があります。経理ナビの出納帳を使いこなすため、まず、出納帳は何のためにあるかということを、考えてみたいと思います。
出納帳の目的とは
現金出納帳を何のためにつけるかという目的の第一は金銭管理です。今朝、有ったお金から使ったお金を差し引きしたものが手元に有るはずです。これを確認することが出納帳記帳の目的です。
出納帳の目的の二番目は、現金の出入り(フロー)のデータを記録して集計することです。この作業の出口は決算書の作成です。
経理ナビの出納帳は、この一番目の目的である金銭管理に使いやすいように出来ています。ここで必要なデータ項目は(1)今朝いくらあったか、(2)今日の入金は?(3)今日の出金は?の3項目です。
入金と出金は取引カレンダーからやってみる
思い切って「帳簿をつける」という作業をやめてみましょう。取引カレンダーから「出金」や「入金」を登録し、一日の最後に帳簿を開いてみてください。残高が計算された帳簿が出来ています。ここで、手元の現金と確認してみてください。
もちろん、取引数が多い会社は、これでは間に合わないかもしれませんが、「帳簿はつけるものでなく、出来ている」と割り切ってみるのも一つの方法です。
経理ナビの仕訳書き出し機能
出納帳を記帳する目的の二番目、複式簿記の基礎データとしての出納帳という役割はどうでしょう。この点では経理ナビは「仕訳書き出し」機能があり、テキストデータを会計ソフトに送ることができます。この段階になると「会計」特有の知識が必要となるものもあります。しかし、日付、支払先、金額、支払の内容がきっちりと記入されていれば、会計データへの変換は必ずできるので安心です。この項目は、金銭管理という点からも必須の項目です。
経理ナビの出納帳の特徴
会計ソフトの「金銭出納帳」と経理ナビの出納帳では基本的な考え方が違います。経理ナビの出納帳は「金銭管理」を第一の目的としており、ソフトが多機能であるため、固有の特徴があります。ここをまず理解してください。
年度の考え方がない
会計ソフトと異なり「年度」という考え方がありません。ここから、12月決算の会社を例にすると前年12月分と今年の1月分のデータを連続して、切れ目無く入力や参照ができます。
勘定科目がない
会計ソフトでは勘定科目が分からない(決定できない)と登録ができません。経理ナビは勘定科目という考え方がないので、自分のイメージした理解できる名称を「相手先」として登録できます。「相手先」は必須項目ですが、具体的な支払先の名称であっても、「工場残業夜食」等の分かりやすいものでもかまいません。
取引区分の選択が必要
取引カレンダーから入出金を登録するには、まず「売上」「仕入」「経費」「その他入金」「その他出金」「給与・賞与の総額入力」のいずれかをクリックします(これは経理ナビが「経理ソフト」であるとともに、資金収支管理ソフトでもあるという特徴からきています)。
この項目だと特に判断が必要ということもないと思いますが、借入金の返済などは「経費」でなく「その他出金」としておくと、収支予定表などの経理ナビの他の機能を使うときに便利です。車両などの購入は会計上固定資産で「経費」ではないのですが、経理ナビでは、「その他出金」でも「経費」でもどちらでもかまいません。
取引カレンダーから入金・出金を登録して出納帳を開くと出納帳の記帳は終わっています。
出納帳から入力する場合
帳簿形式で入力するほうが便利と思う方は経理ナビ出納帳から通常の出納帳のように入力ができます。この場合は「取引区分」という項目を選択しなければなりません。この場合選択できる取引区分は「給与」「賞与」「経費」「その他入金」「その他出金」です。
現金引き出し、預金預け入れ、口座間振替の入力
預金から現金を引き出した、現金を預け入れした、これらは、経理ナビでは「口座間振替」と呼び特別の取扱いになっています。取引カレンダーでも現金出納帳でも「口座間振替の入力」というボタンを押して入力してください。
売掛金回収と買掛金支払
経理ナビ出納帳と預金通帳では、売掛金回収と買掛金支払いは、予定データとして記帳が済んでいます。予定通り、入金があり、また支払を行った場合は、「通帳等で確認済み」にチェックを入れるだけです。
回収予定、支払予定のデータは、請求書を発行する、売上を登録する、仕入を登録することにより、自動的に生成され、それぞれ該当する出納帳、預金通帳に記帳されます。
予定データはブルーで表示され、「通帳等で確認済み」にチェックを入れて確定すると黒に表示が変わります。
売掛金回収と買掛金支払いは、現金出納帳と預金通帳画面で入力することはできません。
消し込み作業の手順
請求書を発行した売上は回収実績に基づき消し込み作業を行います。仕入データも同様です。では、どうすれば、この作業が簡単にできるでしょう。
営業事務等の経験者であれば、普段やっている通りにこの作業を行ってください。経理ナビを使うとこの作業が格段に効率よくなります。
1.売掛残高一覧表を開き、月次選択セレクターで今月を指定します。
2.今月回収予定の一覧表が表示されますから、入金が有ったものをダブルクリックします。
3.該当する回収金額の売上帳が開きます。
4.ここで回収金額をダブルクリックすると「回収修正」メニューが開きますから、「通帳等で確認済み」をチェックするか必要に応じて、日付や金額等を実際のもの訂正します。
直接、現金出納帳や預金通帳で消し込みを行うこともできます。この場合は預金通帳画面で予定として表示されている回収、支払の行をチェックして、回収、支払処理を行うことができます。売掛金や買掛金の数が少なければ、この方法が便利です。
予定通り回収されなかった場合
予定通りの期日に回収されなかった場合や一部入金、値引き、振込手数料を相殺された場合なども対応ができます。次のように処理してください。
回収期日が遅れている場合
予定した期日に入金がなかった場合は、預金帳の入金項目をダブルクリックすると売上回収帳が開きます。該当する日付の回収欄をダブルクリックすると「回収修正」画面になります。
ここで回収予定期日を変更してください。
一部入金があった場合
100万円の請求に対し80万しか入金がなかった場合の処理も同様です。「回収修正」で金額欄を実際に入金があった金額に変更してください。売掛回収帳で確認すると一部入金として残高が計算されていることが確認できます。もちろん、売掛残高一覧表の残高も更新され、残金の回収予定月に「回収予定」として計算されます。
振込手数料の相殺や値引き
これも同様に売掛回収帳から「回収修正」画面で行います。回収修正画面には「手数料作成」と「値引き作成」ボタンがあります。このボタンを押して実際に入金があった金額を入力すると差額が「手数料」や「値引き」として登録されます。
普段の業務手順通りに行っていけば、経理ナビの帳簿はほとんどが自動的に作成されています。記帳するのではなく「確認」し「修正」する作業が大半となります。
更に、この経理ナビの帳簿は会計データとして会計ソフトに書き出すことができます。決算を行い、税務申告書を作成する、消費税の計算をするなどの作業も企業にとって避けることのできない業務ですが、このための労力を大幅に削減できます。
仕訳書き出しの詳細は別項目のガイドで解説します。
