VOB9(2008//02/05) 電子申告は日本を救う!

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電子申告は日本を救う! (齋藤聰明投稿、「東京税理士会葛飾支部60周年記念誌」)


1-日本税理士会連合会認証局の存在意義

いまさら「何言うか!」と叱られるかもしれないが、日税連も東京会を含め多くの単位会が、電子申告の所掌を「情報システム委員会」に担当させたところに最初の「ボタンの掛け間違」があったのだと考えます。 真っ当に考えれば、電子申告は「制度部」の所掌でしょうし、制度部の目で電子申告を検証すべきだったと考えます。しかし、電子申告はパソコンを不可欠とし・パソコンの操作と関連するから

と情報システムの所掌になってしまったです。
電子申告はまさに制度の話です。 法律の話なのです。書面ベースで税理士制度・行政手続きを検討してきたしかるべき所掌が責任を持って担当すべきものであると考えます。
  遅き感もありますが、電子申告はパソコン・プロトコル等の話ではなく、制度の問題として深く検討すべき時期なのです
「税理士が、電子申告に際し、(公的個人認証サービス)による電子署名をしても、日税連認証局による電子署名をしても、その法的効力に相違がないのだとしたら、日税連認証局の設立運営に莫大な資金を投下するのは無駄である。」という意見があります。

確かに「公的個人認証による電子署名と日税連認証による電子署名の法律上の効果」を考察する
と一面そのような帰結に至るのも理解できなくも無い。
  税理士法33条3項は「税理士は、前二項の規定により署名押印するときは、税理士である旨その他財務省令で定める事項を付記しなければならない。」としている。資格証明の問題です。
ところが、電子署名法施行規則第6条八項は「電子証明書に利用者の役職名、その他の利用者の属性(利用者の氏名、住所及び生年月日を除く。)を記録する場合においては、利用者その他の者が当該属性についての証明を認定認証業務に係るものであると誤認することを防止するための適切な措置を講じていること。」と規定する。
ややまわりくどい言い方であるが属性証明(資格など)は、認証局の発行する証明書の正式な項目でないということである。 電子申告においても税理士がその資格を明示して行うことは当然のことである。しかし、この点では、現行規定は十分ではない。我々が検討して解決すべき課題なのです。  電子署名法における電子証明書では、「税理士」という属性を電磁的に表現できないのです。 電子証明書が暗黙に属性や権限を表現する手段として、日税連認証局の構築となったわけです。 つまり、当該認証局が被認証者範囲を限定し(CPSによって)、結果として属性・権限を表現できるのです。 そこに日本税理士会連合会認証局の存在意義があるのです。

2-納税者の電子署名省略に疑問
ここ1~2年は喫緊の課題でとして電子申告普及の数値目標が話題になっている。
東京税理士会も電子申告推進10の提言(2006年3月第590号)を一年前に出し、 提言のほとんどが現実化しており、半年以内に改善・改正案が提案されております。 電子申告に関して、国税庁は納税者の声・関係各位の改善提案を傾聴し、極めて迅速に課題が解決されいるようです。
平成18年6月日本税理士会連合会からも、レベル0~レベル5までのCMM(capability maturity model)みたいな能力成熟度モデルが提案され、レベル0の電子証明書を入手していない状態からレベル5の顧問先の電子申告を行なっているレベルまで、 平成22年までにレベル5で50%達成が数値目標と提言された。 
平成19年度税制改正の大綱(平成18年12月19日)が発表され、この中で電子申請のインセンティブとして「税額の控除」や「添付書類の省略」などが明記された。電子申告の活用推進を図るねらいが見受けられる。
電子申告普及に向けて、次のような斬新な施策が注目される。1.電子署名の省略 2.電子申告の税額控 3.第三者作成書類の添付省略 4.税務関連書類の電子化 5.電子申告等証明制度の創設、どれをとっても今までの国税局では考えられない切り口である。
 ただ、ある意味玉石混合というか、本当に納税者の利便性・実効性のある電子政府実現へ向けた施策と単に電子申告の数を増やすためのやや誤った施策が混在しているように感じられるのです。
その「やや誤った施策」とは 1の電子署名の省略のことである。
 政府が公開鍵基盤(PKI)を機軸とした電子政府を選択した以上、私を含めた多くの税理士が現在如何なる業務フローを実施しているか否かに関わらず、 その新機軸・ルールに従った業務フローを再構築せざるをえないと考えています。個人的には非常に悩ましく・厄介ではありますが、実効性のある電子政府実現にあって、税務行政単独で存在するものでもなく、全体的整合性・最適化の中に存在する以上、やもうえないと覚悟していました。 しかし、新機軸が一方で「国民の利便性」を御旗にするならば、ほんとにそうなのか検証する責務を専門士業は担わなければならないとも考えます。
いま求められている(と私が思っている)「より早く・より安く・より高い顧客満足」の実現は、ネット環境なくしては不可能と思います。 しかし、論理武装もないまま、やれセキュリティだの、やれリスクだのと盲目的に不安をつのらしても無意味ですし、全体を鳥瞰しないままの猛進ではE-JAPA戦略にいう「日本再生の秘策」も血税を大量投与した箱物行政の変化形に終わってしまいます。
ネット環境・デジタル化のどこが危険で、何をどうすれば回避できるか、回避できる手段をどのように扱えば脆弱性を補強できるのか、冷静な目とネット社会におけるリテラシーが税の専門化としての税理士にて求められると感じています。 電子申告を鳥瞰して、一部を除いてなんら目新しいこともないし、長年かかって効率化に磨きをかけて事務所の事務フローを捨ててまで選択したくなるようなシステムとも思えません。
 電子申告もネット環境を前提に開発さているのは当然のことです。よって、電子申告には、危険極まりないネット環境・デジタル化を、安心して非対面で相手を確認し・秘匿性を保持する仕組みが組み込まれています。 その仕組みが 電子署名・電子証明書と表現される公開鍵基盤(PKI)なのです。 この公開鍵基盤(PKI)なくしては安全な電子商取引は成立しないし、この公開鍵基盤(PKI)こそ新しい市場を開拓し・新しいビジネス誕生のトリガーとなる「日本再生」の救世主なのだと確信しています。 もし、電子申告をやってなにか得があるとすれば、この公開鍵基盤(PKI)スキルが身につく・スキルが身につかないまでもその大切さを感じ取れることでしょう。 どちらかというと電子申告の操作など末節なことで、電子申告を介して、いままで未体験の公開鍵基盤(PKI)を顧問先とともに如何に関われるかが、我々にとっては重要なことなのです。 
 ただ 単に電子申告の数を増やす目的で「税理士関与の納税者は電子署名不要」を可とするならば、本末転倒・実効性のある電子政府構築の阻害・世界一のIT国家などほど遠くなりはしないか懸念するところです。
わたしは単なる理想主義者ではありません。理想と現実の乖離を絶対拒絶するものでもありません。受け入れざるを得ない現実と曲げてはいけない理想の境目があることも知っていますし、「あるべき姿」への継続的改善の必要性も知っています。電子申告も電子政府もともに、世界レベルから比較すると発展途上国と言わざるをえません。今後府省は横断的に顧客としての国民満足度を高めるように電子申請全般を改善されていくと思われますが、まだ仕掛品の状態です。したがって、長年かかって効率化に磨きをかけてきた事務所の業務フロー全てを廃棄する必要はないと思います。 あくまで、顧客満足・事務所内満足の視点と自らの戦略に基づいて、新「業務フロー」を構築すればよいのであって、ベンダーから高額な電子申告対応セットを購入し、準備完了とはいかないのです。
「電子申告」の目指すものは、そんな低レベルのものではないと信じております。
私の中では「電子申告が日本を救う!」、そんな使命が電子申告に課せられていると信じています。

3-パソコンを過信せず、専門家としてアナログ視線で検証を

  電子申告における「控え」の件ですが、単に「控え」には法的根拠が無いことを理由に、「受信通知」をもって「控え」を実現したという課税庁の説明を鵜呑みすべきではないと以前から言い続けてきました。(平成19年度税制改正平成20年1月4日より電子申告等証明制度の創設として、電子申告の「控え」が実現)
慣習としての法があり、それがうまく機能し、現実の世界で欠くべからざるものとして存在してきたのであるならば、書面における「控え」もシステムに具現化しなければならない「開発項目」です。 技術的はそれほど困難ではないはずです。  現実、書面での「控え」は第三者への証明機能をしっかりと担ってきた。 「受信通知」をもって「控え」を実現とすることは、「国民の利便性」実現の上で是認はではない。利用者側が与えてきたに過ぎない「証明機能」といえ、それを求める多くの声で、電子申告等証明制度の創設として、電子申告の「控え」が実現したと評価されるべきである。(ただし、現状まだまだ不満、実際の電子申告等証明制度は多くの改善点はありますが)
今回の電子政府構築にあっては、行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律を通則法的に機能させ、「読み替え」・「置き換え」で、税法に限らず個別法を一切改正せず行った。
電子申告の「控え」の問題が解決したとしても、当該電子申請の本格稼動がまだなので明言できないが、単に「読み替え」・「置き換え」だけでは、「電子の手続き」=「紙の手続き」とは説明しきれない事案が今後多数でてくるでしょう。
十把一絡げ式に電子政府構築の為の法的環境整備をするのではなく、個別法を丹念に検証し、当面のネット社会に即応した法の改正・改変・廃棄をしなければならないと思います。
プログラムを診るというのではなく、プログラムをプログラマー任せ・出来上がったアプリケーションを所与とするのではなく、 そのアプリケーションが、ほんとに当該法律が予定している効果を実現しているのか検証しなければならないということです(これは行政側自身の課題であり・我々自身の課題です)。 「これはパソコンの話だから、君らうまく処理してね」ではなく、アプリケーションといえども法に関わるものである以上、一度は直に関わらざるをえないと思います。
電子申告と「どのような信念」を持って関わるかは税理士制度にとっても極めて重要なことです。 何が何でも電子申告は「数」というのでは時代を見間違えます。まずは顧問先のIT化支援が先に来るべきと考えます。電子申告を顧問先IT化支援のトリガーと位置づけるのも、電子申告を顧問先IT化支援の成果と位置づけるのも、それぞれ個々の税理士の戦略ではありませんか。

このブログ記事について

このページは、管理者が2008年2月20日 20:19に書いたブログ記事です。

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