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この文書は「電子署名・認証利用パートナーシップ 2004年度活動報告書」の「電子署名・認証利活用分野に関する提言」の一部として松本泰氏(セコム)と齋藤敏明、阿部隆幸が執筆を担当したものです。報告書全文は下記にあります。
http://www.japanpkiforum.jp/shiryou/report/fy2004_jesap_report.pdf

e文書法と税務関係書類の電子保存
e-文書イニシアチブとe文書法
e-JapanⅡでは、e-文書イニシアチブとして、「法令により民間に保存が義務付けられている財務関係書類、税務関係書類等の文書・帳票のうち、電子的な保存が認められていないものについて、近年の情報技術の進展等を踏まえ、文書・帳票の内容、性格に応じた真実性・可視性等を確保しつつ、原則としてこれらの文書・帳票の電子保存が可能となるようにすることを、統一的な法律(通称「e-文書法」)の制定等により行うこととする。」という方針を決定し、これにより成立した法律が「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」(通称:e文書法)です。
この法律は、既存の法律で規定されている書面保存義務を事業者の選択により、電磁的記録として保存することを認め、そのための共通事項を定めました。その目的は「電磁的方法による情報処理の促進を図るとともに、書面の保存等に係る負担の軽減等を通じて国民の利便性の向上を図り、もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与すること(同法1条)です。

民間の事業活動の中では、様々な書面が作成され、交付され、また保存されています。これらの書面は、法令の規定により作成されるものもあり、法令上、保存義務が課せられるものも相当数あります。この法律の施行により、これらの民間業者に義務付けられた「書面」に関する義務を、選択により電子的に行うことが可能となります。
e-文書イニシアチブの背景には、既存の法制度が「書面」を前提としており、これらの規定が、民間の経営活動や業務運営の効率化の阻害要因となっているという認識がありました。この法律によって、これからは「生成」「交付」「保存」という一連の業務を、原則として電子的な記録「電子文書」で行うことが可能となります。このための立法措置がe文書法ということになります。
しかし、緊急時に即時に確認の必要があるもの等は、一部例外とされました。具体的な電子化の範囲は主務省令で定められることになります。また、税務関係については「適正公平な課税確保のため」として、次項で述べる措置が採られました。


e文書法の税務分野での立法措置
他の分野と異なり、税法の規定する保存義務はすべての企業に関係があり、また、その保存義務も多岐にわたります。後述のように、企業は、税法(特に法人税法)の規定により、企業活動で生成され、また受領する債権債務、金銭に関する書面を保存しています。これらの「書面」は企業が保存する書面の中の相当部分を占めるものと考えられます。また、税法以外の法令で作成や保存の義務があり、法人税法上も保存義務があるという「書面」もあります。したがって税務分野の電子保存は「e-文書イニシアチブ」に大きな影響があるといえます。


立法形式の選択
税務分野で電子保存を容認するとすれば、次のような立法形式が考えられます。
1. 基本法で原則すべてを容認→具体的な範囲は政令委任
2. 個別税法の改正→法人税法、消費税法などの保存規定を個別に改正
3. 電子帳簿保存法の改正→電子帳簿保存法を改正、追加

1は、基本法方式とも呼ばれ、すでに施行されている電子申請、電子申告の根拠法である「行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律」が、この方式です。
2は、一括法方式と呼ばれ民間取引で書面交付を義務付けている法律を一括して改正した「IT書面一括法」などがこの方式です。
今回のe文書法では、1の基本法方式が採られましたが、税務分野については、「整備法」という形式で、既存の電子帳簿保存法が下記のように改正され第4条に第3項が追加されました。

電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律

(国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等)

第四条 保存義務者は、国税関係帳簿の全部又は一部について、自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する場合であって、納税地等の所轄税務署長(財務省令で定める場合にあっては、納税地等の所轄税関長。以下「所轄務署長等」という。)の承認を受けたときは、財務省令で定めるところにより、当該承認を受けた国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存をもって当該承認を受けた国税関係帳簿の備付け及び保存に代えることができる。

保存義務者は、国税関係書類の全部又は一部について、自己が一貫して電子計算機を使用して作成する場合であって、所轄税務署長等の承認を受けたときは、財務省令で定めるところにより、当該承認を受けた国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該承認を受けた国税関係書類の保存に代えることができる。

3 前項に規定するもののほか、保存義務者は、国税関係書類(財務省令で定めるものを除く。)の全部又は一部について当該国税関係書類に記載されている事項を財務省令で定める装置により電磁的記録に記録する場合であって、所轄税務署長等の承認を受けたときは、財務省令で定めるところにより、当該承認を受けた国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該承認を受けた国税関係書類の保存に代えることができる。

(アンダーラインが平成17年4月1日施行の改正部分

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電子帳簿保存法改正のポイント
上記のように電子帳簿保存法は、税務署長の承認を受けることにより、4条第1項で自己が最初の記録段階から電子計算機を使用して作成する帳簿、第2項で同じく自己が最初の記録段階から電子計算機を使用して作成する書類の電子保存を認めていました。今回の改正により、これら以外のものについても「財務省令で定める装置により電磁的記録に記録し保存する」ことが、認められることとなりました。税務署長の承認が必要であることは、1項、2項の場合と同様です。ここでいう「財務省令で定める装置」とはスキャナのことです。これを整理すると下記のようになります。

電子帳簿保存法4条で電子保存が認められるもの

種類等

法令

主なもの

自己が一貫して電子的に作成する帳簿

電子帳簿保存法41

総勘定元帳、仕訳帳等

自己が一貫して電子的に作成する書類

電子帳簿保存法4条2項

請求書、納品書控え、レジデータ等

その他

電子帳簿保存法4条3項

取引に関係して受領し、または発行した証票類等

今回の改正は電子帳簿保存法4条3項の追加であり、具体的には、1項2項で定めるのもの他、財務省令で定めるものにつて、スキャナ保存を容認するという規定になっています。したがって今回の改正のポイントは、スキャナ保存の容認ということになります。
その具体的な範囲、要件等は財務省令で定められることになっており、「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則」が改正されました。

スキャナ保存の対象範囲
税法には、様々な帳簿や書類の保存義務規定があります。すべての企業に関係するものが次の4つです。
1. 法人税法の保存規定
2. 消費税法の保存規定
3. 所得税法(源泉徴収関係)の保管規定
4. 電子帳簿保存法10条による電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存義務
今回の改正で、追加されたスキャナ保存の範囲を理解するためには、これらの個別税法の規定の理解が必要となります。また個別企業の業態によって保存義務のある書類は全部異なります。本稿では、法人税法の保存義務規定を主に解説します。
法人税法施行規則では保存義務のあるものを次のように分類しています。

種別

具体例

1.帳簿

総勘定元帳、仕訳帳、その他資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引に関して作成されたその他の帳簿

2.決算関係書類

棚卸表、貸借対照表及び損益計算書並びに決算に関して作成されたその他の書類

3.その他の証票類

取引に関して、相手方から受け取った注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類及び自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものはその写し

上記の1、帳簿は電子帳簿保存法4条1項の対象となります。2は、スキャナ保存の対象外とされました。また3のうち、記載金額が3万円以上の契約書と領収書も対象外とされました。したがって整理するとスキャナ保存の対象となるものは、①上記の3のうち契約書、領収書以外のもの、②記載金額が3万円未満の契約書、領収書ということになります。

電子帳簿保存法の適用範囲(4条3項が新規に認められたもの)

種別

 

電子保存の種別

1.帳簿

41項対象

2.決算関係書類

書面保存

3.その他の証票類

相手また自己が作成する領収書等(3万円未満)

43項対象

相手また自己が作成する領収書等(3万円以上)

書面保存

相手また自己が作成する領収書等以外の証票

43項対象

自己が一貫して電子的に作成するもの

42項対象

スキャナ保存の要件
スキャナ保存を選択するためには、税務署長への承認申請が必要ですが、本稿執筆段階では、承認申請書の記載事項等の詳細が不明であり、以下は1月31日の財務省令によっています。スキャナ保存の要件の概要は次のとおりです。
スキャナに関する事項
原稿台と一体となったものに限る(ハンディスキャナ等は不可)
解像度1ミリメートル当たり8ドット以上(概ね200dpi相当)
256階調以上のカラースキャナ
入力タイミング
その書類の受領、作成後速やかに行うこと(電子帳簿保存法4条1項の承認を受けている場合は事務処理規定を整備することにより例外規定がある)。
電子署名に関する規定
一つの入力単位ごとに、入力を行う者または直接監督する者の電子署名を付すこと(電子署名法の認定認証事業者及び商業登記法によるものに限る)。
タイムスタンプに関する規定
財団法人日本データ通信協会が認定する「時刻認証業務」がタイムスタンプを付すこと。
スキャン記録の保存
スキャナで読み取った際の解像度、階調及び書類の大きさに関する情報の保存。
完全性の要件
訂正や削除を行った場合は、これらの事実内容を確認できること。
帳簿との関連性
スキャナ文書と帳簿との間の関連性を確認できるようにしておくこと。
見読性に関する要件
電子計算機、プログラム、カラーディスプレー、カラープリンタ、操作説明書の備付。
次の条件で出力できるようにしておくこと。
① 整然とした形式であること
② オリジナル書類と同程度に明瞭であること
③ 拡大、縮小して出力することが可能であること
④ 4ポイントの大きさの文字が認識できること
検索性の確保
取引年月日、取引金額等一定の検索条件にしたがって検索ができる機能を確保すること。

タイムスタンプを要しないもの
なお、国税庁告示第四号(平成17年1月31日)に定める書類については、スキャン文書にタイムスタンプが要件とされません。定型的な約款があらかじめ定められている場合の契約の申込書や、口座振替の申込書などが該当します。

スキャナ保存制度の創設の意義
執筆段階では、詳細が不明ですが、スキャナの入力単位や検索性の確保がどのように取り扱われるか等によりコストは大幅に違ってきます。検索性の確保では、スキャンデータ中にある「日付」や「金額」等を検索することができるようにするためには、OCR処理が必要となりますが、この完全性は期待できません。検索性要件が厳格であれば、オリジナルデータの記載内容をデータに付加する必要がでてきます。またスキャナで読み取った際の情報の保存でも「書類の大きさ」に関する保存が規定されています。
しかし、電子帳簿保存法4条3項によるスキャナ保存制度は、企業が保存する電子文書、画像データの完全性を確保する手段として、電子署名、タイムスタンプに「市民権」を与えたという意味で画期的な意義があります。また、要件を満たすスキャナもさして高価なものでなく、中小企業にとっても十分導入可能なものであるといえます。
e文書法は、単に企業負担軽減という目的だけでなく「電磁的方法による情報処理の促進を図る」ことを目的」(同法1条)としています。中小企業も含め多くの企業が導入することによってe-文書イニシアチブの目的が達せられることになります。

e文書法については衆議院内閣委員会で「税務関係については適宜その対象範囲の見直しを行うこと」との付帯決議が付されています。(平成16年11月10日)なお参議院でも同趣旨の付帯決議が付されています。

衆議院内閣委員会付帯決議

政府は、両法律の施行に当たっては、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。

一 両法律の施行に伴う主務省令等の制定及びその運用に当たっては、国会における議論及び民間事業者等の意見を十分に踏まえるとともに、経済社会情勢等の推移に応じて必要な見直しを行うこと。また、主務省令等の内容について、国民の経済活動等に支障のないよう、十分周知徹底すること。

二 情報の改ざん、漏えい、不正使用等が行われないよう、民間事業者等に対して、情報通信の技術革新に対応したセキュリティ対策及び個人情報の保護のための適切な措置が講じられるよう必要な助言等を行うこと。

三 税務関係書類の電子的な保存については、適正公平な課税及び電子化によるコスト削減等の観点を踏まえつつ、適宜その対象範囲の見直しを行うこと。

四 処方せんの電子的な作成・交付等については、患者等の利便性の向上、技術的実現可能性等を踏まえつつ、その可否について引き続き検討していくこと。

五 地方公共団体において両法律の趣旨にのっとり適切な措置が講じられるよう、情報提供その他必要な措置を講ずるものとすること。

 

一般に企業にとって、税法が規定する保存義務が最も範囲が広いと考えられます。しかし、適正公平な課税が確保できる制度でなければならないことは言うまでもありません。最後に、今後電子保存を拡大していく上で、考慮すべき事項を挙げておきます。

電子保存の対象に関して
通達等が規定する保存義

e文書法では、「法令の規定により書面により行わなければならないとされているものについて、書面の保存に代えて当該書面に係る電磁的記録の保存を行うこと」を容認する法律であり、この場合の「法令」とは、法律、政省令のことをいいます。通達や大臣告示等で保管を義務付けているものは含まれません(参議院内閣委員会答弁)。税務関係書類では、給与支払者が保管する「扶養控除等申告書」や「保険料控除申告書」等は、これに該当します。これらについての取扱を明確にする必要があります。
3万円以上の領収書等
電子化文書(スキャン文書)の真実性を担保するためには、次の3つのすべてが保証されなければなりません。
①オリジナルの文書に偽造や改ざんがないこと
②スキャンが正しく行われたこと
③画像処理後改ざんがないこと
今回のスキャナ保存制度の創設では記載金額が3万円以上の、契約書、領収書等は除外されました。しかし、スキャナ保存を行う場合、3万円未満はスキャナ保存、それ以外は書面とすると、領収書綴りや請求書発行控え等の一覧性が損なわれます。むしろすべてスキャナ保存とし、別途書面も保存するほうが利便性が高いと考えられます。さらに、現行のマイクロフィルム保存制度と同等に一定年限を経過したものについては、3万円以上のもの電子保存のみでよいとする制度を導入することが可能であれば、大きな負担軽減となると考えられます。

おわりに
e文書法案は、文書の電子保存を容認する法律であり、電子保存を義務付ける法律ではありません。従って、紙による保存から電子保存に移行するかどうかという判断は各企業に委ねられています。
現在の社会は、法制度で保存が義務付けられた文書等に関しては、まだ、紙文書が中心であり、民間の取引においても紙と押印が主流だと考えられます。それに対して、ITによる効率化をはかるためには文書の電子化は避けて通れない課題であり、e文書法の大きな意図はここにあるはずです。一方、理想的な電子社会は、効率と共に不正に強く透明性の高い社会であるべきはずです。これには、やはり電子署名やタイムスタンプといった技術の普及と更なる研究開発が欠かせないと考えられます。
文書の電子保存に関しては、電子署名、タイムスタンプの実用化以前と、現在では全く状況が異なります。電子帳簿保存法の「自己が一貫して電子計算機を使用して作成する帳簿書類」に限り、電子保存が認められるというのは、電子署名法が施行され、電子署名、タイムスタンプが実用化された現在では、見直しが必要な段階にきていると考えます。
電子署名とタイムスタンプが施された電子文書は、その電子文書のデータ自体が、誰の意志のよって存在し、改ざん検出が可能で、何時の時点から存在しているかを証明します。こうしたことにより、電子文書は、「電子システム保存」の対象となった装置内に留まらず連携するために必要な電子文書として機能するはずです。e-JAPAN戦略の中でもIT基盤を利用した連携の必要性が至るところで説かれていますが、官民や利害関係者間などの連携を促進するためには、この電子署名とタイムスタンプが施された電子文書の重要性がもっと認識されるべきだと考えられます。 e文書法では、その目的として「国民の利便性の向上を図り、もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与する」としています。こうしたことを現実のものとするためには、多方面にわたる議論と、努力が望まれます。

参考文献
松本 泰「文書法案のインパクトと今後の電子社会のあり方」
http://www.jnsa.org/active/press/vol12pdf/2_tokusyu1.pdf

関東信越税理士会4.15.jpg関東信越税理士会 2007年(平成19年)4月15日発行 論陣に掲載

電子化が情報漏洩事故を防ぐ

 パソコンやインターネットの普及、電子化が情報漏洩事故の原因となっているということはいわば常識である。しかし、ここでは、あえて「電子化が情報漏洩を防ぐ」ことを論じたい。本稿は、まず情報漏洩事故の実態と個人情報保護法の安全管理義務について述べ、電子化こそが安全管理の手段であることを結論とする。

情報漏洩事故とは

 情報漏洩事故といえば大げさに聞こえるが、現実はもっと身近なものである。日本情報処理開発協会プライバシーマーク事務局の「平成17年度の個人情報の取扱いにおける事故報告にみる傾向と注意点」によれば情報洩れの原因として誤配送等が71.5%、メール配信ミスが7.9%で、これだけで80%である。置き引きや盗難の15.2%を加えると事故の大半が、身近なものであることがわかる。業務に即して具体的に考えてみると、送付先を間違えて書類、FAXやメールを送ってしまった、カバンを置き忘れた、盗まれたなどであろう。注目すべきは、大半がインターネットとは関係がない「ささい」なミスであることだ。

個人情報保護法の規定

 個人情報保護法の背景には、電子データの大量性や特性、電子社会の進展があることは疑いない。法律が施行され二年であるが、いまだに誤った解釈があるようだ。その一つが法律の主旨である。この法律は「個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護」(第1条)することを目的としているのであり、個人情報の利用や収集を禁止しているものではない。もう一つが、この法律によって安全管理義務が課せられる個人情報取扱事業者の範囲であり「5千件」なければ関係ないというものである。
 まず、第一であるが個人情報保護法という名称からか、プライバシー保護一般と同一視し、個人情報の収集、保持、利用の禁止を規定しているかの誤解である。個人情報保護法は収集、利用の禁止を規定しているのではなく、個人情報の利用が有用不可欠であることから、取扱事業者に収集利用について一定の義務を課しているのである。法律の規定する「個人情報の取扱い」とはきわめて範囲が広く、ほとんどの日常業務が、これに該当する。名簿等の個人名の集合物の取り扱いだけが対象ではない。
 第二は「5千件」である。法律は個人情報取扱事業者から除外される者を「個人情報データベースを構成する個人の数の合計が過去6ヶ月以内のいずれの日においても5千件を超えない者」と規定している。このデータベースとは電子化されたものに限らず、検索が可能な状態に整理されたものを言う。この5千件とは顧客数や会員数ではない。5千件には受託加工中のもの、税理士でいえば顧客の処理データも含むのである。経済産業省のガイドラインによれば、コンピュータ処理されたものをプリントしたものもデータベースに該当するとしているので、年末調整ソフトから出力したもの等はすべて件数に入るということになる。この他にどこにもある顧客名簿、メールの受信、発信履歴など等を考えると「事業の用に供する」個人情報を数えることはまず不可能である。更に年末調整や給与計算に関しては「雇用管理に関する個人情報」として厚生労働省の告示があり、これらを受託すれば、この規定による義務も間接的に発生する。
 これらを考えると個人情報保護法上の義務者であるか否かは関係なく、個人情報保護法に準拠した業務のあり方を考えなければならない。情報洩れは、内容によっては当事者にとってのダメージは決定的である。

安全管理とは
 
 では、法律はどう規定しているのであろうか。「個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失又はき損の防止その他個人データの安全管理のため必要かつ適切な措置を講じなければならない」これだけである。この点では主務官庁がガイドラインを作成することになっており、各省庁から公表されている。ガイドラインの中でも最も詳細なものが経済産業省のそれであり市販の解説本のほとんどが、これに沿ったものとなっている。しかし、いずれも記述が大企業向けであり、そのままでは中小企業や税理士事務所には関係がないか、あまりにもハードルが高い。しかし、税理士事務所が取り扱う情報の量、重要性から考えると法律上の義務の有無にかかわらず、安全管理は必須である。安全管理とは「漏洩防止」と「滅失予防」である。滅失の予防とは、紛失しないこと、データを壊さないことということになるが、ここでは特に漏洩防止について考えてみたい。


電子化こそ安全措置

 先に述べたように、漏洩原因の大半は、ささいなミスである。しかし、どれだけ注意しても、間違いは起きうる。しかし、間違って送信(送付)しても相手が、これが読めないとなったらどうだろう。書類を盗まれたとしても取得した者が、内容が読めないとしたらどうだろう。こんなことは書類では不可能であるが、電子データでは、このような措置が簡単である。
 このように、正当な権限がある者だけが、その情報を見ることができるようにする措置を広い意味でアクセス管理と呼ぶことができる。アクセス管理というと難しそうであるがそうではない。鍵付きの書庫に書類を入れておけば、それは鍵を持っている者だけがそれを見ることができる。この権限の委譲は鍵を渡すことで簡単である。アクセス管理がなされていれば、ミスがあったとしても情報漏えいは防ぐことができる。電子申告時代の到来である。業務の多くが益々電子化する一方で、電子データやパソコン、インターネットへの不安の声も聞く。しかし、普通に注意すれば電子の方が安全である。
 例を挙げよう。家に鍵をかける、重要な書棚に鍵をかける、これは当たり前である。しかし、パソコンの起動管理はどうなっているだろうか。パソコンも鍵がなければ起動しないようにしておけばよい。この鍵が「パスワード」では不安だし、第一面倒である。「鍵」とは、これがないと、パソコンが起動しないようなものであり、周辺機器として、またはソフトウエアとして各種販売されている。この「鍵」は現代の技術では家の鍵や書架の鍵を壊すより難しい。
電子化の優位性は暗号化にもある。電子データは暗号化が簡単である。税理士の業務では資料の収受、申告データの受け渡しなど、顧問先とのデータのやり取りが日常的である。これも可能なものすべて電子化すれば暗号が使える。暗号と言ってもおおげさに考える必要はない。従来であれば専用線の架設が必要な安全がインターネット技術の進展で、高度な技術や知識も必要なく誰でも手に入る。
積極的な業務の電子化で、情報漏洩事故を防ぐことができる。

 

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