ご挨拶
中小企業は経営を科学的に行うことによって、もっと生産性を高めていける可能性をもっています。ただ、その方法をご存じないだけなのです。多くの中小企業がデータもツールも揃っているのに、それを分析して経営に生かす方法をご存知ないのが残念です。
会計データを税務申告だけのために使っている中小企業の皆様!ただ会計ソフトの入力をしているだけでは、経営に役立つ分析結果など得られません。せいぜい、去年と対比してどうであったかといった程度のものでしょう。財務分析の資料を見て何か経営に役立ったことはありますか?おそらく、「分かったつもりにはなるが、それでどうすればいいんだ?」というのが実際のところではないでしょうか。
会計データは企業の統計情報の一つでありながら、長い間統計学的分析とは切り離されて扱われてきました。ここでは、会計データを統計解析という手法を使って分析することによって、「感覚的な経営の数値による裏づけ」と「数値から浮かび上がる問題点」を検討、検証していきたいと思います。私たちと一緒に経営における「次の一手」を見つけませんか?
(初代管理人 松波竜太)
「平均」はある集団の特徴を表す代表値の一つです。
例えば、10人で構成される2つのグループのテスト結果を例にとります。
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | ←被験者番号 | ||
| Aグループ | 1 | 5 | 8 | 4 | 3 | 8 | 7 | 2 | 9 | 6 | 総得点 53 | 平均 5.3 |
| Bグループ | 2 | 1 | 3 | 8 | 4 | 7 | 5 | 6 | 1 | 4 | 総得点 41 | 平均 4.1 |
この場合、Aグループの方がBグループよりも平均点が1.2点高いといいます。
この場合、Aグループの方はBグループよりも平均点で1.2点高い集団であるということが分かります。
ただ、これだけであれば、総得点を比べているのと全く変わりません。
平均が便利なのは要素数が違う集団との比較ができるからです。
次のようなケースを考えてみましょう。前の例と違うのは被験者数です。
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | ←被験者番号 | ||
| Aグループ | 1 | 5 | 8 | 4 | 3 | 8 | 7 | 2 | 総得点 38 | 平均 4.75 | ||
| Bグループ | 2 | 1 | 3 | 8 | 4 | 7 | 5 | 6 | 1 | 4 | 総得点 41 | 平均 4.1 |
グループAは総得点ではグループBよりも3点低くなっていますが、
平均点でみると、グループAはグループBよりも平均点で0.65点高い集団であるということが分かります。
このことをふまえて、私達の周りの平均の使い方を考えてみたいと思います。
[問題]
Aグループ内の1点をとった1番の被験者にクラス平均の5.3点をめざして頑張りましょうとアドバイスするのは適切でしょうか?
[解答]
動機を与える意味で、目標の一つに定めるのは良いことかもしれませんが、平均点を目標とする根拠は全くありません。あくまで平均はその集団の特徴を表すための指標です。
[解説]
「他の人と同程度の成績をおさめる」
と考えであれば、 平均≠普通 なので注意が必要です。
これについては世帯貯蓄額(家計調査)で気になったことを記事を参考にして下さい。![]()
平成16年における世帯あたり平均貯蓄額は1,728万円ですが、この値をみて、「となりの家も1,700万円くらいは持っているだろうから、我が家も頑張って貯めなくてはとは思いません。
むしろ、最頻値である200万円以下をみて、「あ~ぁ我が家も普通だな。」と考えるのが普通です。
平均値の使い方の正しいイメージは、例えば、次の<県別個人所得の比較>のような感じになります。
平成18年度の国税庁発表資料(国税庁>活動報告・発表・統計>統計情報>2 直接税)の、県別の所得税に関する資料を参考に見てみたいと思います。
総所得額等は個人の所得税を計算する上での課税額を求める際の元になる金額です。
ほぼ、個人の収入(注)と考えてよい額です。
人数、総所得金額等の隣に、総所得金額等を人数でわった、県別一人当たり個人収入を計算しました。
(注:ほぼというのは、給与は給与の額の7割程度、事業所得や不動産所得は収入から経費を差引いた金額で計算されていると考えると分かりやすいと思います)
これを、総所得金額等順と一人当たりのランキング形式に並べ替えてみたいと思います。
県別の総所得額等の合計では、東京都が第一位です。
1人当たり総所得額等においても、第1位から第4位までは変わりありませんが、第5位以降の順序は違います。
このように、人口が異なる県の収益力を比較するための道具が「平均」なのです。
これをふまえて、経営指標における平均の使い方を考えてみましょう。例えば、このような感じになります。
[正しい解釈の仕方]
・建設業の売上総利益率の平均と運送業の売上総利益率を比較して、運送業の方が利益率が高いことが分かった。
[誤った解釈の仕方]
・売上総利益率は業界平均以上だったが、固定資産長期適合率が業界平均を下回っているので、短期の借入金を長期の分割返済借入金に借換える努力を優先して行うようにしたい。(平均との比較高低は、優先順位をはかる指標にはなりません)
各指標の経営に対する重みは異なります。
経営指標の重みは、社長の考え方やその企業によって異なるものだということを理解することが大切です。
全ての経営指標において平均点を目指しても強い経営になるということは証明できていませんし、感覚的にはそれは違うと思います。また、「強い経営」という表現もあいまいで、叙情的な表現です。
これも社長の考え方やその企業によって、目指す方向や、思考の傾向は異なりますし、同じ会社でも時間が経てば、また別のものになりますので、この様に経営すれば絶対間違いないという定石を他に求めるのは間違いだと思います。
間違った指標の見方をして、経営のバランスを崩すことの無いようにくれぐれもご注意下さい。
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筆者プロフィール
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松波 竜太(まつなみ りょうた)
税理士(関東信越税理士会所属)
神奈川大学経済学部卒。大手OA機器商社・会計事務所勤務を経て、現在 浦和税理士法人 代表社員(埼玉県さいたま市)。本業の決算、税務申告・相談を行う傍ら、会計データの統計解析法を研究する。帰納的アプローチにより企業の経営課題を分析し、成果をクライアントである中小企業にフィードバックしている。「多くの中小企業がデータもツールもそろっているのに、それを分析して経営に生かす方法を知らないのは残念。中小企業はもっと生産効率を高めていける」と考えている。「お役立ち会計事務所全国100選 2004年度版」(三和書籍、実務経営サービス編)に選出される。
ブログ:http://www.maznami.biz/

